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 ジャレッド、その他収容者達が殺された――
 それにより、急遽開かれた会議。知った面々がずらりと並ぶのを見て、松葉はこっそり溜息を吐いた。皇帝の姿は無いが、代わりに第一皇子の姿はある。次男である青褐はこの場には招かれておらず、代わりに松葉が出席していた。
 息苦しい、とても。
 蘇芳は涼しげな顔をしているが、他の重鎮達は暗い顔をして一様に苛立ちを滲ませている。この件をいったい誰の責任にするか、それが今回の裏の意図である議題。

「――松葉殿、報告を」
「はい」

 司会らしき初老の男性の指示に従い、一応は取っていたメモに視線を落とす。たいした事は聞けなかったが、魔女の件と裏切り者の件は重要事項として話さなければならないだろう。

「――以上がジャレッドに関する報告です」

 しん、とした部屋に松葉の声だけが響いた。
 話題の中で重鎮達が一番に興味を示したのは間者がいるかもしれない、という話だ。現に、松葉の話が終わった途端に始まるヒソヒソとした話し声。

「松葉」
「あ、はい」

 兄のつまらなさそうに細められた瞳がこちらを見ている。普段は何てこと無い光景なのだが、状況が状況なだけに背筋が伸びるのを感じた。

「首斬り死体、だったのだな?」
「はい」
「・・・ならば、ジャレッドの自殺でもなく、牢の惨状もまたジャレッドの仕業ではない、と」
「そう、なりますね」

 それよりも!、と斜め向かいに座っていた男が口を開いた。

「裏切り者を捜すのが先だろう!我が国の情報が漏洩しているのだぞ!」
「心当たりでもあるのですか、その口ぶりだと」

 蘇芳が至って冷静に尋ねた。何故か憤慨している男を見て「何をこいつは取り乱しているんだ」、と言わんばかりである。
 澄ました態度が気に障ったのか、男は次期皇帝を睨むように見やる。

「正直に申し上げますと、貴方の奥方様――あの、魔女。彼女が一番怪しい!」
「根拠はあるのですか?」
「魔女などという得体の知れないモノ・・・」

 ――くすくす、と。
 まるで嘲るように、滑稽なモノでも見るように嗤う蘇芳の不気味さに室内が静まり返った挙げ句、体感温度が2度くらい下がった。