2.





 サラサラとメモを取ったドルチェが再びまじまじとジャレッドを見やる。まさに動物でも観察しているような体であるが、本人にまったく悪気は無い。居心地悪そうにジャレッドが目を逸らした。

「えっとじゃあ・・・召喚術はどこで習ったの?あ、別に聞いてこいとか言われた訳じゃ無いよ。お師匠様に報告する方だから」
「師匠?へぇ、あんたみたいなのにも師がいるんだな。意外だぜ」
「え、そう?」
「テキトーだろ、あんた」

 ――そうだろうか。
 例の『ケルベロスっぽい』召喚獣と戦った時はかなり彼女に助けられた。最終的には兄の救援に頼ったものの、剣士2人じゃ死人が出ていたところだ。
 そう考えると、彼女が適当に魔法を使っていたとは思えない。

「ううん?そうかな・・・って!私が聞いている事に答えて欲しいんだけど!」
「嫌だ」
「えぇ・・・。じゃあ、目的は?」
「もっと食い下がれよ。目的はだから、召喚獣の試運転だ、つってんだろ」

 そのままこの質問は終わるかと思ったが、それは可笑しい、とドルチェが意外にも食いついた。小説のネタにするのだろうから、彼女にとっては結構重要な問題なのだろう。目が必死である。

「それは別に、東瑛でやる必要はなかったんじゃないかな。だって、もっと辺境の地、っていうかわざわざ城下町でやる事ないでしょ?目立つし、こうして捕まる可能性だって高くなるわけだし」
「・・・教えねぇよ。俺が消されちまうだろ」
「うーん、じゃあ仕方ないなあ」
「ホントにテキトーだな、あんた。・・・ちょっと俺からも聞きたい事あるんだけど」

 待て、と松葉は口を挟んだ。ジャレッドが言うように、内通者がいるのならばドルチェを通して城内の情報を教えてしまう事になりかねない。監督不行届で間違い無く兄に怒られる事を思うと、あまり会話させたくなかった。
 嘉保が一歩前へ出る。完全に緊張状態に陥っていたが、当人である魔女は現状に気付いていないのかけろっとした顔をしている。
 そんな現場の機微を察したのか、ジャレッドが器用に肩を竦めた。

「別に、ここについて訊きたいわけじゃねぇよ。おれはそっちの女そのものについて訊きたい事があるんだ」