2.





 一方で、第三皇子・不知火松葉は地下牢を訪れていた。その背後には嘉保が控えている。というのも、数日前に彼等が捉えてきた今回の事件の首謀者――例のフード男に質問する為である。
 今の所、分かったのは2つ。
 1つは彼の名前がジャレッドである事。これは世界的指名手配犯として彼が名を馳せていたので、自然と露呈した事実である。
 もう1つは、彼は首謀者であるが、それより上にもう一つ何かしらの後ろ盾があるという事。彼の取り巻きである魔道士達の出所がてんでバラバラだった為、不知火蘇芳がそう推測したのだ。
 階段を下りていきながら嘉保と会話する。

「どう思われますか?やはり、蘇芳様の仰る事が正しいと?」
「ああ、そうだろうな。考えたくはないけど、それが一番自然なんだよなあ」
「ジャレッドの人脈を調べてみましたが、集まっていた魔道士達とは何の関係性もありませんでした。やはり、蘇芳様の御意見が正しいのでしょうね」
「先が思いやられるぜ」
「青褐様が帰還なさっているようですが、会われないのですか?」
「別に・・・あの人もあの人で自由人だから、付き合ってたら事件解決どころの話じゃなくなるだろ」

 常に太平楽な二番目の兄を思い浮かべる。何の風の吹き回しか、唐突に帰宅した彼は今頃どうしているのだろうか。
 同時に蘇芳の正室であるドルチェの顔が思い浮かぶ。彼女は随分と順応力が低い人間なので、唐突な第二皇子の帰還に戸惑っている事だろう。案外、相性が良かったりするのかもしれないが。
 色々考えているうちに目的に到着した。
 松葉は鋭い視線を牢の中へ向ける。

「よお」

 嗤う――どこか疲れたような顔をした魔道士、ジャレッドが気安く片手を挙げた。疲れていても首謀者としての貫禄は捨てていないようだ。
 一歩後ろに立つ嘉保に視線を移す。

「状況は?」
「仲間を犠牲にしただけあり、なかなか目的を吐いてくれません」
「――そうか」

 情報隠滅の為、仲間を手に掛けたジャレッドはやはり一筋縄ではいかないらしい。あれだけ大見得を切っていたのだ。まさか彼自身が情報を吐き出すなどあり得ないだろう。
 ならば尋問するより、誘導した方が上手くいくのではないだろうか。松葉の専門ではないが、丁度青褐が帰っているし――