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故にエルドレッドはどちらに対しても同等程度の助言を出した。
「――君達の枷の鍵を見つけてくれたのはノーラ姫だ。というか、鍵の在処をライアンに教えたのも彼女だろう。故に、散々王族に虐げられてきたとはいえ、彼女もまた同じように悪いのかと問われれば一概にそうとは言えないんじゃないか」
指導者の言葉に奴隷達がざわつく。彼と相性の悪いノーラ姫もまた真意を掴みかねるような表情でエルドを見ていた。
だが、とそこでエルドレッドは肩を竦める。
「同時に彼女はライアン以外の奴隷がどうなろうとどうでもいいらしい。偶然にも、彼が奴隷であったからこそ、鍵の在処を教えた。それもまた間違いじゃない」
ぎょっとして姫君を見やる。彼女が善良な性格だとはお世辞にも言えないが――
少しだけ困ったような顔をした彼女は黙ってひらひらと両手を振った。
「そうだね。それだけはエルドレッドが言う事は間違っていないよ。私は君達がどうなろうと知ったこっちゃないからさ。ライアンは友達だけれど、その他の私を――王族を嫌う君達の事、私が好きなわけないでしょ」
「ちょ、姫さん!?そこは嘘でも奴隷解放宣言しましょうや!」
「だって本当の事だからね。誠意のこもっていない言葉ほど、世の中に要らないものは無いよ」
だったら君は、と存外に強い口調でノーラ姫は言う。
「君は、私以外の王族を助けようとはきっと思わないよね。それと同じ。ああ、別にお父様達を助けて欲しいってお願いしているわけではないよ。それこそどうだっていい事だからさ」
彼女は芸術家だ。
個性的な感受性を持つ、才能の塊。
けれどそれでも、やはり家族という観念が随分と薄過ぎるような気がしてそっと視線を逸らした。