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このまま城を徘徊するのも一つの手だったが、折角鍵を手に入れたのだからまずは奴隷達の解放が先だろう、という事で一同は城の外へ帰ってきていた。
「上手くいき過ぎて恐いぜ」
「ライアンでも恐いと思う事ってあるんだね」
「そりゃ、そうでしょうよ」
全てが上手くいっている。その気になればもうこの国から出て行けるし、何よりあまり実感は湧かないがもう自由の身なのだ。また旅をするのもいい、かつての仲間というか友人を捜してもいい。
或いは――
と、隣を何の警戒心もなく歩く少女を見やる。彼女は確かに姫君だが、最早国の人間ではないライアンにそれは関係無い事だ。かつて彼女に提案したように、ノーラ姫を連れて外の世界へ行く事だって出来る――無理矢理にでも。
以前、姫君は「一緒に出て行こう」と提案した際、枷云々の問題が、などと言って断られた。しかしその言い訳は現在無効である。そうして、現にノーラ姫は何の躊躇いも無くエルドではなく自分に着いて来た。
それらを加味して結果を求めたとして。
もう一度あの時と同じ提案をすれば、彼女は受け入れてくれるのではないだろうか。
「どうかしたのか、ライアン」
「・・・いや、何でもねぇ」
ふとエルドレッドに呼ばれて我に返る。そうすれば自然と状況が見えてきた。エルドの周りに群がっているのは奴隷――否、元奴隷の連中である。それを遠巻きに見守っているらしい住人の姿も見える。
奴隷生活中は見た事の無い活き活きとした顔で鍵を外していく仕事仲間達の一面。目を眇めてその光景を見ていれば自然と彼等の会話が耳に入ってきた。
「いやあ、これで奴隷生活も終わりかあ・・・」
「せいせいするらぁ!さっさとこんな国は出て行くにこしたことはねぇ」
「エルドの兄ちゃんが城攻め落とすなんて言ってっけど」
奴隷だった人間は国の外から来た者が多い。よって、彼等が自由の身となった以上、ここに留まる必要は無いのだ。
そろそろ真剣に身の振り方を考えねばならないかもしれない。出来ればエルドレッドの手伝いを最後までやってから出て行きたいものだが――
「というか、何故ノーラ姫様まで?」
「さぁ・・・獣のあんちゃんに着いて来たんだろう・・・」
「いや、どうして」
「俺は知らんよ。けど、あの人等、仲良かったから」
「友情?馬鹿げてるなあ。どっちが馬鹿なのかは分からないが」
「所詮は――王族だからな、あの姫様も」