4.





「よし、厄介な奴が戻ってくる前に鍵を探し出すぞ!」

 厄介な奴――王、デイミアン=アクランドが帰る前に枷の鍵を探し出す事が最低条件である。王子は厄介な敵にならなかったが、王までもがそうだとは限らない。人でなしだろうが何だろうが一国を治める者なのだから。
 しかしさすがは王室。無駄な物が一切無い。それはつまり、物を隠す場所もあまり無いという意である。もともと物探しがあまり得意ではないライアンはすでに行き詰まっていた。

「おい、見つからねーぞ!」
「今探してる!くっ・・・間違いの情報だったか・・・!?」

 高価そうなツボの中、玉座の裏、兵士達の持ち物――
 出て来ない。探しても探しても、目当ての物が見つからない。けれど、ノーラ姫を疑う気にはならなかった。

「エルド!俺は物探しが――」

 苦手なんだよ、と続けようとした矢先。不意に王室の巨大な扉が開き掛けて閉じたのを見つけた。反射的に身を翻し、扉へ突進。誰だったのかはよく分からなかったが中で伸されている王子達を見て援軍を呼びに行かれたのでは堪らない。
 ライアンの腕力を以てすればその扉も無力だった。成人男性が結構な力を入れてようやく開ける事が出来るそれを片手で跳ね飛ばすように開け放つ。

「うわっ!?」
「は!?」

 小さな悲鳴と共に何かが腹の辺りにぶつかった。ぎょっとして視線を落とせば珍しく驚いたような顔をした――

「姫さん!?」

 ノーラ=アクランド。扉にしがみついていたらしく、勢いよく開けたせいで倒れ込んできたらしい。それだけは現状を見て理解出来た。姫君も姫君で驚きを隠せないのか浅い呼吸を繰り返していた。

「か、身体があんなに勢いよく浮いたのは初めてだよ・・・なかなか、あれだ・・・エキサイティングだね!」
「す・・・すんません」

 何をしに来たのか。どうして彼女がここにいるのか――
 その他諸々、訊きたい事はたくさんあったもののそれは全て切羽詰まったようなエルドレッドの声によって強制的にキャンセルされた。

「離れるんだライアン!忘れたのか、彼女も王族なんだぞ!」

 はっとして振り返れば、さっきエルドレッドが伸した王子、倒れた近衛兵達――自分達がやらかした惨状が嫌と言う程視界に入った。