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王室に着いた。部屋の前に立っていた兵士達は意識を失って床に伸びている。ライアンは王族にさえ攻撃を加えなければいいので、兵士を倒す事に関しては何ら問題が無かったのだ。
大きな扉の隙間から部屋の中を覗き込んでいたエルドレッドが微かに首を傾げる。
「兵士しかいないみたいだな。今がチャンスか・・・」
「枷の鍵か。探してる間に帰って来るんじゃねぇのか?」
「王様がか?まぁ、その時は・・・その時だな」
ともかく、と扉から離れたエルドが形容し難い顔で頷く。苦肉の策なのかもしれない。組んだ腕もそわそわと落ち着き無く組み替えている。
「まずは中の兵士達を一掃するぞ。彼等が俺達を見逃してくれる事は無いだろうからな」
「へっ。俺の出番か」
「君1人には働かせないさ」
もう一度中を覗き込む。ライアンには何かの隙間を覗き込む、などという苛々する作業は到底出来ないので確認しようとも思わなかった。
「王族は・・・いないみたいだな。さっきノーラ姫とすれ違った時はドキドキしたが、俺の事は気付いていなかったようだし」
誰かが隠れているわけはないよな、と言い聞かせるように言った彼はぐぐっと背伸びした。
「いないとは思うが、王族がやって来たら手だけは出すな。俺が相手をしよう」
「王族の腰抜け共が剣抜いて掛かって来るとは思えねぇけどな」
「相手が奴隷だと思えば多少は強気になるかもしれない」
「はっ!反吐が出るよな」
そうだな、とどこか哀しそうにそう言ったエルドが扉にそっと手を沿える。大きな扉だ。中は静まり返っているようだからこの扉を開けばその音が室内に盛大に反響する事だろう。それはつまり、誤魔化しは効かないという事。
「行くぞ!」
そんな意味を持つ扉をエルドが力一杯に押した。