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 王子が3人、王女が4人。そして王にその后。計9人の王族がこの国にはいるわけだが、一人例外というか、除外というか、どういう見方も出来るグレーゾーンに位置する王女がいる。
 第四王女、ノーラ=アクランドだ。何やら妾の子らしい。王と遊女の間に出来た子だとか、スラムの女との子供だとか、町娘との子供だとか色々説はあるものの、それを知るのは本人達だけだ。
 王子3人の方も性格の問題からか、次の王はほぼ決定しており、王族の子供事情に悩みはあまり無いらしい。迷惑な話だ。

「そーいや今日、外へ行った時に聞いたんだが、どうも西の街で暴動が起こったらしい」

 正面に座っていた男達の会話が耳に入ってくる。ライアンの仕事は城内である事が多いので、あまり外へ行かないのだ。が、彼等は外回りが多いらしくよく世情について話している節がある。

「暴動?あぁ、王室の兵団に鎮圧されたっていうあれか?結構前の話じゃなかったっけかな」
「馬鹿、それとは違ぇよ。それはお前・・・一月も前の話じゃねぇか」
「そうだっけ?つか、一月でまた暴動かよ」
「だよなぁ。最近物騒だよな、ホント。あーあー、兵士の数が減ったら俺等も戦地へ連行されんのかねぇ」
「兵役と奴隷、って言ったら兵士の方がいいだろ。なんせ、飯は食える」
「違いねぇや!!」

 げらげらと笑ってはいるが、それは空虚なものでとてもじゃないが聞いていられない悲壮感がある。彼等はこうして物事を達観したような事を言うが、結局それは本心じゃないのだろう。

「もうむしろ、この王都で内乱でも起こしてくれねぇかな。逃げ出してやるよ」
「おいおい、枷はどーすんだよ」
「だよなぁ。これが問題なんだよな・・・実際」
「つか、枷の鍵ってどこにあんだよ。俺、王族共がそんな感じの道具持ってるとこ、見た事ねぇぞ」
「捨てた、とか?」

 ――いや、鍵を捨てる事は無い。誰かが拾って奴隷に与えるとまずいから。
 そう心中で思いながら、鈍色に輝く鍵を思い浮かべる。それが銀の鍵なのかは知らないが、ともあれ鍵の在処は察しが付く。
 ――恐らく、王室。王が所持しているのだろう。
 或いは倉庫。どちらかでまず間違い無い。より厳重に管理するのであれば、王室なのだろうが。