2
「おーい、あんちゃん、起きろー」
「・・・おう」
おっさんの声にうっすら目を開ければすでに日は高く昇り、肌寒い小屋が少しだけ暖かくなっていた。たぶん、もう5時過ぎてる。ということは今朝、仕事は無かったということか。
寝起きの頭でぼんやりとそんな事を考えていればライアンを叩き起こした奴隷仲間がははっ、と乾いた笑い声を漏らした。
「今朝は仕事ねーってよ」
「じゃあ、なんで起こしたんだよ・・・」
「いや、もう10時だぜ。あんちゃんよ」
――随分と寝過ぎたらしい。そりゃあ起こされて当然だ。
見れば見窄らしい小屋は飢えている奴隷達で溢れている。その目は、誰も彼も「こんな所でよく眠れるな」と言わんばかりである。
――知ったことじゃねぇけど。
現在、この小屋には20人と少しぐらい奴隷が収容されているが、ライアンが来たばかりの頃にいた面子はもう誰もいない。たった1ヶ月で全員死んだ何だかしていなくなったのだ。
よって、今この小屋で一番の古株はライアン自身だということになる。
人間よりも頑丈に出来ているライアンは、肉体労働如きでは病気にもならないし過労死する事もなかったのだ。
――もちろん、それよって喜ぶのは奴隷を買う金が浮いたと言う王族達だけだが。
「何か、誰かいねぇだろ・・・少なくねぇか?」
「あぁ・・・今朝方、酷い臭いがすると思ったら・・・」
そういえば一人、病気になってずっと寝たきりの男がいた気がする。とうとう隔離されたか、或いは死んでしまったのか。
ぐるりと見渡す。獣人はライアンだけだ。そして、女もこの小屋には3人しかいない。全員いるようだから、今の所は持ち堪えているようだ。悲壮な顔をして、ストレスで倒れそうな顔色だが。
どこからか、腐臭がする――
「食べ物、腐ってんじゃねぇの?何か臭うぜ」
「いつもだろう」
そう言って、男が深い不快溜息を吐いた。汚い天井を仰ぐ。
「今日も酷い有様だ。まるで生き地獄だねえ・・・」