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街の正確な地図など頭に無い。それでも、人がいないからか、或いは袋小路が存在しない地帯なのか。行き止まりにぶち当たって止まる事は無かった。
ここがどこなのか、それは分からないが、ともあれ不審な集団を発見。まるでカルト宗教か何かのように黒いローブを纏い、金色に輝く術式を囲んでいる。全員が全員、下を向いて話し合っているので私達の存在には気付いていないようだった。
「よりにもよって、街の入り口ですか・・・」
「完全に嘗められてるな」
「格好からして、たぶんというか確実に魔道士だね。1・・・2・・・5人かな」
女性二人に男性三人。それで全員だった。魔道士の集団だからか、かなり接近しているにもかかわらず、こちらに気付く気配が無い。
目的地が見えたからか、並走し始めた嘉保の眉間に皺が寄る。
「見ない魔道士ですね」
「分かるの?」
「東瑛帝国では魔道士は登録が必要です。未登録の魔道士は、国内の魔道士ではありません。もちろん、秘密裏に魔道研究している者もです」
「それって厳しいね。登録するのに幾らかかるのさ・・・」
「んなセコい事しねぇよ!馬鹿ッ!!登録させるだけだっつの!」
それもそれで人権的問題がありそうだが・・・。しかし、仕方が無いのだろう。それも。しかし、そんな会話を打ち切るようにすでに私の前を走っていた嘉保が立ち止まる。そして、聞いたこと無いような荒々しさと刺々しさを含んだ大声を上げた。
「そこで何をしているッ!」
そのうちの三人がびくりと怯え、残りの二人は何とも言えない、微妙な反応をした。間違い無くクロ確定だろう。疑わない要素が、むしろ無い。
そう私でも判断したのだから、二人が臨戦態勢に入るのは一瞬だった。
「大人しく投降しろ。お前等が大人しく俺等に捕まってくれるのなら、この場では殺さねーよ」
「もうちょっと上手く言いくるめられないのですか、松葉様・・・」
はっ、と松葉くんが獰猛に嗤う。
頭脳派と言えど、剣を振り回して戦う剣士である事に変わりはないようだ。
「相手は殺人犯だぜ。容赦なんざしてられるかよ」
やはり、その『殺人犯』という言葉に狼狽したのは嘉保の怒号を聞いて怯んだ三人のみ。恐らく、頭は差ほど動じない二人のどちらかだ。
額に体内の魔力を集める。とりあえずは、転送魔法で杖を呼び出し左手に握った。アルミ製のそれは、装飾の先にサファイアの鉱石を着けている。蒼い輝きが、月の放つ鈍色と混ざって融けた。