第3話

11.


 いいか、とアリシアは熱弁する。決して彼女を仲間に入れたくないわけではなく、この目的のない且つ危険な旅には巻き込めないという名目で。クライドはワルギリアが連れてきたので不可抗力だったが、防げる危険は防ぎたい。
 しかし話を聞いてもリディアはきょとんとした顔をするのみだった。間違い無く話の趣旨を理解していない。

「――取り敢えず、今の私の説明を踏まえた上でもう一度着いて来たいのか聞こう」
「え、着いていって良いんでしたら、私は喜んでお供しますけど……。あっ、もしかして迷惑でした!?」
「いや別に迷惑とかそういう話ではなくてだな。なぁ、ワルギリア?君はどう思う?」

 唐突に話を振られたワルギリアがぐぐっ、と背伸びしつつ適当この上無い調子で答える。完全に人選ミスだ。

「いいんじゃない、好きにすればさ。別に邪魔ってわけでも、逆に、いて助かるってわけでもないだろ」
「ワルギリアさん……!ありがとうございます、私ここで頑張ります!」
「そうかい。じゃあもういいな、はい解散」

 ワルギリアはそのままエーデルトラウトすら放置して宿の方へ消えて行った。今思えば今日はハードスケジュールだったし疲れていたのかもしれない。
 まあしかし、ここまでお膳立てされればリディアを歓迎しないわけにはいかないだろう。思えば、彼女もなかなかに可哀相な境遇だ。傷心旅行したっていいじゃないか。

「テキトーな奴だな。ま、俺にゃ言われたくねぇだろうが」
「歯切れが悪いな、トラウト。何か心配事か?」
「そうさなぁ――俺はあまり賛成してないぜ、実はな!ギャハハハハ!!」

 思わぬエーデルトラウトの言葉に自身の目が丸くなったのが分かった。彼こそワルギリアより適当で、仲間の加入などそれこそどうでもいい、と言いそうなのに。
 冗談めかしていたせいか、トラウトの機微に気付くこと無くリディアは首を傾げている。何の話をしているのかも分かっていないのかもしれないが、彼女のちょっと頭が弱い所は彼女自身を救うのかもしれない。

「もういいだろ、宿に帰ろうぜ。俺もさすがに疲れた。気疲れってやつか?あ、トラウトはこっちに寄越しな、リディア」
「あ、はーい。やっぱりトラウトおじさまとは同室なんですか?クライドさん」
「オジサマ……?まあ、俺はそもそもラジオの整備って名目で着いて来てるようなもんだからな」

 ラジオを受け取りながらクライドが酷く怪訝そうな顔をしているのを余所に、宿へ帰ってワルギリアにエーデルトラウトについて聞いてみようかな、と思案してみた。答えなど恐らく返ってこないのだろうが。