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何だかよく分からない状況に陥っている。どう表現すれば適当なのか、或いは自分は何か勘違いをしてここへ来たのか。それすらも曖昧でよく分からない。
そこでエディスは領主・アレクシスの背を見る。彼は今、先頭に立って何故か屋敷の案内をしていた。勿論、エディスを案内してあちこちの部屋を紹介しているのだ。とはいっても、この屋敷はとても広いので、どこの部屋がどこにあるのかなど聞いた端から忘れ去っているが。
「大丈夫かい?顔色が悪いような気がするのだが」
「あっ・・・は、はい!だいじょっ・・・大丈夫です!」
「えっ、本当かい・・・?」
――顔色はあなたの方が悪いと思います。
何て言えるはずは無かった。アレクシスが困ったように首を傾げているのがよく分かる。
「休憩しようか?」
「全然、まだ、歩けますっ!」
「そうかい?疲れたら素直に言うんだぞ」
そもそも――エディスは生贄としてこの屋敷に送られたはずだ。だが、いまだに生きているし食べられる気配も無い。アレクシスが人間ではないという事については薄々気付いているが、いきなり首を刎ねられるという危惧も必要無さそうに思える。
悶々と悩んでいると、アレクシスの足が止まった。釣られて立ち止まると目の前には大きな2枚扉。
「ここは大広間だ。が、今は入れない」
「え、えっと・・・何故ですか?」
「今は昼間だろう?見ての通り、私は日が落ちてからの活動が主だからね。昼間にはあまりこう、力が」
「えっとつまり・・・ドアが重くて開かない、という事ですか・・・?」
「そういうことさ」
そっと扉に手を沿える。確かに、この扉だったら下手な大人も重くて開けられないかもしれない――
ぐっ、と手に力を込める。あくまでゆっくりと、勢いではなく徐々に力を掛けるように。
ギィ、と扉が軋んだ音を立てた。ゆっくりと大広間の全容が明らかになっていく。
「えっと、その・・・開きましたけど・・・あっ!す、すすすすいません!勝手な事してすいませんんん!!」
「君・・・君、凄いな!いやぁ、助かったよ!いつも朝食は客間で摂っていてね!不便だと常々思っていたところだ!」
がしっ、と両手を握られ、ぶんぶんと振られる。結構な力だったが、エディスにとってはそうでもない力でもあった。
「そうだ!お礼として、昼食をここで食べよう!いいパンが手に入ったんだ!」
そう言ってアレクシスは慌ただしく大広間の奥へと消えていった。エディスはと言うと、どうすればいいのか分からず、ぽつんと置いてある大きな机の脇にこぢんまりと所在なさげに佇んでいる。