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離れないでくれ、と必死に懇願してくるフレディと無言でくっついて来るアドレイド。正直、足痛いし歩きにくいのでもう少し離れて欲しい。暑苦しい。
「重い、暑い、歩きにくい・・・もう少し離れてよ」
「う、うるさいわね!ほら、離れればいいんでしょっ!」
「いやだから・・・限りなくゼロ距離だから、私達」
取り留めのない話をしていたシンシアはふと足を止めた。何やら、音が聞こえた気がしたのだ。はぐれたメンバーかもしれないし、ちょっと音に集中したい――
「ね、うるさいから少し静かにして」
静まり返った一同。風の音に混じって――何かの旋律のような、けれど女の悲鳴にも聞こえる音が鼓膜を打った。
「うぉおお!?これ、ヤバイんじゃねーか!?」
「うん。ヤバイね。フレディの怖がりようがヤバイね」
「言ってる場合か!音、こっちから聞こえてくるな?じゃあ、来た道を戻るしか――」
「上に行く、って手もあるわよ」
逃げる算段を立て始める大人達を尻目に、一瞬だけ色々考えたシンシアは音の方へと足を向けた。記憶が正しければ、この先にいるのはフレディ達が妄想しているようなそれではなく、知り合いである。
ふらふらと音を頼りに歩き始めたシンシアを見て、保護者は悲壮な声を上げた。
「おいおい、しっかりしろ!危ねぇって!」
「え、行ってみようよ」
「お前のその鋼鉄の精神は何なんだ!」
――まあ、多分、エリオットだろうけど。
一番言わなければならない台詞を口に出さなかったシンシアはなおも纏わり付いてくる大人達をいなしつつ、音の出所へ進む。
「怖いなら、そこで待ってていいけど?」
「いや、足痛いんだろ、シンシア」
「はぁ・・・」
変に冷静な保護者に意味が分からずシンシアは首を傾げた。