5.





 走って戻って来たフレディと何故かアドレイド。彼は蒼白な顔をして開口一番にこう宣った。

「おまっ、シンシア!いきなり脅かすんじゃねぇよ」
「別に脅かしてないんだけど。それにしても、凄い怖がりようだったね」
「笑うんじゃないわよ」

 ふて腐れ、睨み付けてくるアドレイド。しかし状況が状況だ。ちっとも怖く無いどころか、どこか微笑ましい。にやにやしているのがバレたのか、思い切り睨み付けられたが。

「ん?あれ、お前、足怪我したのか?引き摺ってるじゃねぇか」
「2階から落ちてきた時に、着地失敗した」
「だろーな。シンシア、運動神経よくねーし」

 歩けるか、などと訊きつつ保護者に手を引かれる。正直、素早い動きは無理だが歩く事自体は難なく出来るのでその手を離した。
 ここでアドレイドの提案により、情報を交換する。

「あたし達はちょっとトラブルがあってはぐれたのよ」
「まあ、主にいきなり院内の小道具が爆発したり、とかな・・・」

 ――あ。
 嫌な予感が背筋を走る。それってもしかしなくとも、カーティスの悪戯じゃなかろうか。銃声はちゃんと消していたので、まさか自分達が狙撃されたのだとは夢にも思っていないだろう。

「あー・・・えっと、その、それは多分、カーティスの悪戯じゃないかな」
「悪戯?どういう事よ」
「その、カーティスが悪ノリで銃ブッぱなした」
「悪ノリの限度越えてんじゃねーか!当たったらどうするつもりだったんだよあの人!!」

 まったくである。
 ともあれ、フレディ達がはぐれた理由は少なからずチームBにあるようだ。

「じゃあ、あれも?笑い声」
「笑い声?それは知らないけど・・・」

 答えた途端、2人の動きが止まった。啀み合っているところをよく見掛ける面子だが、実は仲良いのかもしれない。
 引き攣った笑みを浮かべたフレディにがっ、と肩を掴まれる。必死な形相に思わず笑うが、笑うなと頭を叩かれた。強い力ではないが、何となく腑に落ちない状態である。

「ほ、本当に最初の銃使った悪戯以外はしてないのか?」
「してないよ。私達だって肝試し始めてたし」
「そ・・・そう、か・・・」
「この世の終わりみたいな顔しないでよ、鬱陶しいな」

 急に動きがかくかくし始めた大人連中に、シンシアは小さな溜息を吐いた。彼等はあてに出来ないな、と。