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一方のシンシアは痛む足を擦っていた。華麗に着地したと思っていたが、やっぱりそうはいかなかったようで右足が痛い。ただ、折れてるとか捻挫、とか。そんなわけではなくちょっと捻っただけらしい。全然立ち上がれるし、走るのは辛いが普通に歩ける。
自分が落ちてきた穴を見上げるが、生憎と暗くてほとんど何も見えない。仕方が無いので、自分で階段を見つけて上へ行くしかないようだ。
もちろん、自分の肩に手を置いたのがサイラスである事は気付いている。うっかり異常な反応をしてしまったものの、彼の後ろにハーヴィーが立っていた事まではちゃんと認識していた。
「ついてないなぁ、もう・・・ああ、眠い」
呟きながら右足を引き摺るようにして歩く。恐怖心とは無縁なのでちっとも怖く無いが、同チームメンバーと完全にはぐれるのは恐いので急ぎ足だ。
「・・・ん?」
角を曲がった瞬間、人影を発見。何やら行ったり来たりと忙しない二人組だ。身長差が結構ある。暗くてよく見えないが、何か話し合っているようでもあり、何かを押し付け合っているようでもある。
「・・・おーい!」
足を引きずる自分では置いて行かれかねない、と判断したシンシアは大声で呼び掛けた。跳び上がる人影2つ。そこまで大袈裟な反応は正直要らないのだが――
次の瞬間、2つの人影は我先にとダッシュ。目を見張るはやさである。ぎょっとしたシンシアは、今度こそ大声ではなく切実に叫び声を上げた。
「ちょ、待ってッ!!」
ぴたり、と大きい方の人影が立ち止まった。釣られてもう片方も立ち止まる。明らかに相手を蹴落とす勢いで走り去って行ったが、一応は互いに相手の事を思いやっている場面を微笑ましく思ったり。
「――シンシア?」
「・・・え、うん」
伺うような声音。というか、聞き覚えのあり過ぎる声にシンシアは安堵の溜息を漏らした。今日は絡みの少なかった保護者とようやく再会出来るらしい。