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シビアで仲の悪いチームCの本領が発揮されたのはここからだった。誰一人怖がっていない上、一人は酔っ払い。そんな彼等だったが仕事の早さだけは一級品の猛者達だったのだ。
「おい。蝋燭見つけたぞ」
先頭を歩いていたハーヴィーが不意に呟いた。エリオットを宥めていたサイラスは指さされた方向を見やる。
まさに、今持っている蝋燭と同じ蝋燭。ただし、火は着いていない。
「へぇ、もう見つけたのかい。あまり怖くはなかったねぇ」
「僕はもううんざりだ。帰るぞ」
本当にうんざりした、という口調で言うコーディの声をBGMに事務仕事の彼は黙って火を移す。本来ならば最初に持っていた蝋燭が燃え尽きるぐらいの時間を予想していたのだろうが、生憎と初期装備の蝋燭はまだまだ長さがある。
「――?台座から蝋燭が取れないな」
「ほう、なかなかのギミックだねぇ。怖がる奴だったらここでパニックになるところだ」
「剥がせるか?無理に取ると蝋が折れそうだ」
「おじさんに貸してみなさい」
火を移したはいいが、台座に故意に強く固定されているせいで蝋燭が取れないらしい。フレディも細かいネタを仕込むのだけは上手い。こういうのは少し冷静になれば取れるのだが。
「ハーヴィー。お前さん、意外と不器用だねぇ」
「何の話だ?」
「自覚症状は無し、か」
蝋燭を台座から取り外し、ハーヴィーに渡す。振り返ったサイラスはそこではた、と足を止めた。
「・・・コーディ。エリオットを知らないかい?」
「エリオット?・・・そういえばいないな」
――酔っ払いの姿が無い。
もちろん、コーディが飲んだくれの面倒を見るとも思えないので放置されている間にどこかへ行ってしまったのだろう。
くらり、と眩暈がした。
「・・・おじさん、ちょっとあの酔っ払いを捜して来るよ」
「同行しよう」
「冗談じゃないな。僕は帰るぞ。蝋燭を貸せ」
はぁ?と明らかに怒りを含んだ声を上げるハーヴィー。コーディもまた、苛々と爪先で床を弾いている。