4.





 シンシアが1階へ落下する少し前。10分経ったので最後のチームCも動き始めていた。とは言っても、このチームと言うのが犬猿の仲であるコーディ、ハーヴィーに何故かべろんべろんに酔っているエリオット。そうして比較的常識人なサイラスという最悪のメンバー構成となっている。

「あーのさぁ、サイラス」
「・・・どうかしたかい、エリオット」
「新曲を・・・考えたんだけど・・・今ここで弾いていいかい?」
「いや正気か?立ち止まるなら置いて行くよ」

 確認を取ったくせに本人の中では廃病院での演奏会が決定していたらしく、背負っていたヴァイオリンを取り出す。へらへらと笑いながらも手付きは慣れたもので、誤って楽器を落としたりなどというハプニングは起きなさそうだ。
 ややあって滑らかなヴァイオリンの音色が紡ぎ出される。酔っているからか、たまに音を外しているのが妙に生々しくて気味が悪い。

「――煩いぞ、エリオット」

 眉間に皺を寄せ、前を歩いていたコーディが振り返った。ありありと顔に不機嫌さが現れている。

「貴様も煩いだろう、コーディ。黙って歩け」
「ふん、そうやって僕に絡むのはやめたらどうだい?」
「何を好きこのんでお前に絡まなければならないんだ。自意識が高いな」
「いやいや、お前程じゃないだろうさ」

 ――仲悪い。
 険悪なムードを隠すことなく放つ2人に思わず溜息が出る。仲良くしろとは言わないが、相性悪いなら会話しなければいいのに。
 そう思いついたサイラスはコーディの襟首を掴んだ。蝋燭を持っているのはハーヴィーなのだから、彼が先頭を歩けばあとは誰がどこにいようと問題は無いだろう。

「おい、何するんだ筋肉馬鹿!」
「あーあー、はいはい、と。君達、近くにいると喧しいからねぇ。ちょっと離れててもらうよ」

 コーディを最後尾に押しやる。エリオットの不協和音と憤慨しているらしい彼の呟きが相俟って背後が不気味な事になった。
 しかし、さっきよりマシな空気になったのでよしとしよう。