3.





 それから程なくして問題が起こった。それも、チーム全体としての問題でもなくシンシアの個人的な問題である。
 ――後ろから、パタパタと小走りのような足音が聞こえて来る。
 少し前を歩くカーティスは寒気の原因解明に勤しんでおり、音になどちっとも気付いていないようだしサヴァナにそんな事を言うのは論外。エドウィンに相談するには少々遠すぎる。
 何より、シンシア自身に危機感が無かった。仲間の誰かかもしれないと思っていたのだから当然である。足音に恐怖を感じるような、可愛らしい感性は持ち合わせていない。

「あー、寒ぃ」
「大丈夫?私の上着、貸してあげてもいいよ」
「なんでそう上から目線なのかね・・・」

 アホな会話をしつつ、後ろに気を配ってみる。もう、足音は消えていた。
 ならこちらも気にする事は無い、と再び意識を前に向けた。

「っ!?」

 瞬間、とん、と肩に手らしきものを置かれ、思わず言葉を呑み込む。声にならない声を上げ、真横に跳躍しながら振り返ったところで身体が傾いた。バキッ、という嫌な音が足下から聞こえる。

「シンシアちゃん!?」

 驚いたらしいカーティスの焦った声。やや遅れて腐った床を踏み抜いてしまったのだと気付いたシンシアは肩の手よりまず、下に落ちる事を危惧した声を上げた。

「どうしようカーティス!足、嵌った!」
「待ってろシンシアちゃん、今すぐ救出してやるから!」
「ちょ、待ちなさいよカーティス――」

 焦ったカーティスが何の躊躇も考えもなくシンシアへ駆け寄る。
 ――と、当然、シンシア1人の体重も支えられなかった床はギシギシと嫌な音を立て始めた。あっ、という顔をしたカーティスが身を引くがすでに遅い。
 嫌な音と共に、シンシアが立ち、カーティスが踏み込んだ床が抜けた。

「し、シンシアちゃぁぁあん!?」

 上から聞こえるカーティスとエドウィンの悲鳴を聞きながら、シンシアは至って冷静に1階の地に着地。仕方が無いから階段を捜して上るしかないらしい。