2.





 ところで、と不意にアレンが振り返った。先頭を歩くのは蝋燭を持ったトラヴィス、その一歩後ろを歩いていたアレンの後ろにはアドレイドとフレディがいる事になる。

「貴方達――もしかして、怖がってますか?」
「は、はぁ!?そんなわけないでしょ!」
「別に俺も・・・怖くはねぇな」

 ふふっ、と笑ったアレンが再び前を向く。

「近々」
「え?」
「近々――なかなかに興味深いものをみる事が出来そうですね」

 隣を歩くフレディが微かに顔をしかめた。こういう意味深発言が気になるのは人として当然のことである。
 さっきの言葉の意味は何、そう問おうとした瞬間。
 パァンッ、という鋭い音がして廊下に散らばっていた医療器具の一つが弾け飛んだ。ひっ、と短い吐息のような悲鳴が漏れる。

「なっ・・・えっ!?何だよ!?」
「使い終わった後の注射器が破裂したな」
「いや、なんであんたそんなに冷静なんですかっ!?」

 破裂したと思わしき使用済みの注射器を見下ろしたトラヴィスは無表情のままにまったく見当外れの言葉を呟いた。

「危ない事だ・・・」

 ――そうじゃねーだろ!
 心中でツッコんだアドレイドはこの状況下で謎の常識人ぶりを発揮しているフレディへ視線を移す。彼も事の異常さについて言葉にしたかったらしく、力強く頷いた。

「何でいきなり注射器が爆発するんだよ!」
「そうよ。ここ、危ないんじゃない!?今すぐ出た方が良いわ!」

 正直に言うと、もうここから出たかった。もともとあまり乗り気ではなかったし。

「先住民の方が住んでやがるんだよ・・・」
「足を動かせ」
「・・・・了解ボス」