2.





 もちろん、フレディが用意したのは怖いシチュエーションと舞台だけだったので、割と平和に探索は進んで行く。当然、ただ歩いているだけでは飽きるので自然と話題は組織のメンバーについてになっていった。

「そーいや、シンシア。あいつ、滅茶苦茶くじ運良いんだよな。なんつーの、無欲の勝利っての?」
「ああ、君と違って欲が無いからでしょう」
「――そうだとすれば、損した体質だな。自分が欲しい物は手に入らないという事だろう」

 珍しく会話に参加していたトラヴィス。彼の的を射た意見にそうかもしれませんね、とアドレイドが呟く。

「そういえば、サヴァナ大丈夫かしら?あの子、案外怖がりなのよねえ」
「ええ、知っていますよ。まあ、エドウィンさんがいるから大丈夫でしょう」
「えー、サヴァナが怖がってるところとか俺は想像出来ねぇなあ」

 そう、実は彼女、非常に怖がりである。怖い話を聞くのは平気、けれど現地へ赴くのは苦手だとか。そのためか、彼女が『幽霊』なんてものを怖がっていると知る人間は少ない。ちなみに――

「エドウィンはサヴァナが怖がりだって事、知らないわ」
「駄目じゃねぇか。Bも一波乱ありそうだな・・・そーいや、シンシアはあの二人組、苦手だったんだ」
「ホント、なんであんたはくじ引きに細工しなかったのよ。絶対にやると思ってたのに」
「面倒臭ぇだろ?」

 フレディの面倒臭い、という基準がよく分からない。そもそも自由人なので私生活からして色々な謎が多い人物である。アレンやハーヴィーでさえ、彼の行動は把握していないらしいし、そもそもシンシアの面倒をいつまで見ていられるのかが目下の問題となっているようだ。
 そういえば、とすでにサヴァナの話に興味を失ったらしいフレディが疑問顔で首を傾げた。

「昼飯って各自で勝手に食うだろ?たまに、キッチンに誰かが置いてるチャーハンとかラーメンとか誰が作ってんだ?馬鹿みたいに美味いんだよな、あの置き食」
「知らないわよ。けど、確かにあの味は好みね」
「そういえば、わたくしも知りません。ハーヴィーなら知っているんでしょうけど」

 組織のメンバーは全員合わせて12名。もちろん、それ以外に人はいない。掃除も自分達でやるし、食事も好きな時に好きな物を食べればいい。作ってくれる人間はいない。
 そんな中、作りすぎたのか或いは善意からか、キッチンに作った後の料理が置いてある事がある。最初は怪しくて手を着けた事は無かったが、ハーヴィーが平気な顔をして食べていたので手を出してみた次第である。
 恐らく、ほぼ全員がそうだろう。

「あれを作っているのはサイラスだ」

 ぼそり、と抑揚の無い声で呟いたのはトラヴィスだった。アドレイド達の視線がボスに集中する。

「趣味の一つが料理だそうだ。置いてあるのは、作りすぎて余ったものらしい」

 ――新たな事実が発覚。
 サイラスは料理が上手い。