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「ちょっと・・・なんであたしが蝋燭持たなきゃならないのよ」
火の着いた蝋燭。揺れる炎が不気味さを増しているのだが、それを手にしたアドレイドは顔をしかめた。最初はフレディが持っていたはずなのだが、気付けば持たされていた。まさかトラヴィスやアレンに渡すわけにはいかず、文句だけが口から漏れる。
「いやでも、俺が先頭歩いたら肝試し終わるぜ。隠したの俺なんだから」
「そういう時ばかり正論言ってんじゃないわよ」
「おー、理不尽だな」
恐い恐い、と人をおちょくってるとしか思えない言葉を吐き出す《自由主義者》に殺意が湧いてきた。さらに文句を言おうと口を開く――
「!?」
瞬間、鋭い光が目に刺さった。暗い場所に慣れていた目がじんじんと痛む。一瞬だけ何も見えなくなったのだが、次の瞬間には何が起きたのか理解した。
トラヴィスが差し出した左手に煌々と輝く光の球が出現していたのだ。最初は眩しすぎたそれだが、光量を調節したらしく今は足下もよく見えるしまるで明かりを付けたかのように明るい。
「ちょ、ちょちょ、ボス!?何やってんですかアンタ!」
「暗い」
「そういう演出なんですよ!消してください!」
「・・・・・」
呆れたような溜息を吐いたボスはあっさりとその光を掻き消す。今度は明るさになれてしまったので、暗い廊下が余計に暗く感じた。
「とりあえず、1階から回りますか?だんだん上に行く感じで」
「好きにしろ」
アレンの一言により、1階の探索が始まった。