4日目

4.



 一方、困った顔をしたのはデュドネだった。大方、別室へ連れて行って個別に話を聞くべきか、今ここで証言を受け取るか迷っているのだろう。生徒にも人権と言うものがある。話を聞くまで分からないヴェーラの証言を生き残り組の前で聞かせるのは良くない事なのかもしれない、と。
 けれど、当のヴェーラがそれを赦さなかった。デュドネが結論を出すより早く、普段は温厚な口調だったその声で言葉を紡ぐ。

「アルハルトを刺し殺したのは、クラスBのラウラですっ!ハッシュの時のように、即刻処置を!!」

 バッ、と一同の視線がラウラに集まる。人垣が一瞬で割れたので、彼女がどこにいるのかすぐ分かった。エルバートの驚いたような視線とヴェーラの強い瞳が交錯する。
 クラスB、ラウラ――は、ぼんやりとヴェーラを見返し、そして首を傾げた。

「えー・・・っと、言ってる意味が・・・分からないんだけどー・・・なー・・・」

 途切れ途切れ、眠気を誘うような声に警戒心が一瞬緩む。とても人殺しが出来るような子には見えなかった。
 そんな彼女の隣に立っているのは同じくクラスB、レックスである。彼とラウラの関係性はハッキリしないが、指さされて犯人扱いされている彼女の隣に平然と立っている事から鑑みて、クラスメイトという関係性だけではない何かがあるようだ。
 ともあれ、レックスはラウラの代わりにか険しい表情でヴェーラを睨み付けている。ラウラが犯人扱いされている事に腹を立てているようだ。

「白々しい事言わないでよ!私の目の前で!私を庇ったハルトくんを刺し殺したでしょ!?」
「んー・・・知らない・・・」

 どう思う、とアイリスはフェリクスに尋ねた。が、この問いは正直、答えの見える問いだったと言わざるをえない。何故ならフェリクスはクラスA。どちらの証言が正しいのか分からない以上、クラスメイトの肩を持つのはほとんど必然と言うものだ。
 かくして、彼はアイリスの予想通りこう答えた。

「さぁね〜。どっちがホントの事言ってるのかは分からないけど〜、クラスの肩持つって事で、俺はヴェーラちゃんを信用しておこうかな〜」

 様子がおかしかった理由はこれだね、と彼は陽気に笑う。その様はまるで好きな映画を見る直前の女子生徒みたいだ。脳天気が少々過ぎるのではなかろうか。

「で〜、アイリスはどっちが正しいと思うの〜?」
「どっちも正しくないと思う」
「ふぅん?何で何で〜?また小難しい事考えてるでしょ」
「人間の人数がかなり減ってきたから、人外同士の『人間と思わせる』策戦かもしれないでしょ?この時点で、嘘を吐いてる方は例外なく処分されるんだろうから。正しいと思われた方は人間側に貢献した事になる。ってわけで、人外同士の茶番だと思って私は見てるよ」

 一度「この人は人間側だ」、と思わせてしまえば魔女狩りの被害に遭わないで済む。そう考えれば、仲間の1人を斬り捨てて「《憑者》の残りは3人だ」と思わせた方がいいのではないだろうか。
 しかし、フェリクスはやっぱり陽気に笑った。

「それってさぁ、ラウラちゃんじゃなくて〜、クラスCの誰かだったらまた違ったわけ〜?」
「・・・分からない」

 正直なところ、ハンスは信用出来ないタイプの人間だし、イザイアはヴェーラのように頭など良くない。こんな騒ぎは起こせないだろう。
 ならばシャールカだったら?彼女もまた、内気な性格からして言い出せない事だろう。

「やっぱり分からないわ」
「だよねぇ。アイリスはそーゆー子だよ」