4日目

3.



 場が再び静寂に包まれる頃、ようやく今回の集会の目的を語る順番が巡ってきた。前へ出たのはデュドネである。恐らく、この場にいる教師の中でもっとも冷静に物事をまとめる事が出来るからだろう。
 現に、今まで1回も顔を出さなかった講師、ヘルヴィは青い顔をしている。教師達の中でもっとも若い彼女は完全に巻き込まれただけなのだから、唐突にこんな訳の分からない状況に陥って混乱しているのだろう。

「今回集まってもらったのは、見ての通り、学園内の人数が大幅に減ってしまったからだ。さすがに平常授業が出来る状況じゃない」

 重々しく語るデュドネ。その背後ではエルバートとエヴァンが何やら話し合っている。
 情けない事に、と担任は表情を更に暗くした。

「《憑者》の目撃情報も、襲われて生還した者もいないようだ。情報が圧倒的に足りない。現在、《憑者》と思わしきクラスBの生徒が1人見つかっているが・・・残り4人と《裏切り者》が1人。このままでは学園内の生徒及び教師は全滅するだろう」
「――デュドネ先生」

 静かな場に、女子生徒の声が響いた。思いの外、強く、凛とした声色だったので一瞬誰なのか分からなかったが、それはアイリスにとっても知る人物だった。

「あーあ。やっぱりね〜。何かあると思ってたんだよ」
「――ヴェーラ」

 ふん、とフェリクスが面白く無さそうに鼻を鳴らす。見れば、フェリクスと似たような温厚さをまとうクラスAのヴェーラがデュドネの前まで出て来ていた。その顔に表情は、無い。

「ハルト――いえ、アルハルトくんの件について、です。私、彼を殺した犯人をこの目で見ました」

 淡々と告げられた言葉は水紋のように周囲に喧騒を広げる。「今、あの子は何て言った」、「《憑者》の目撃者」、「それは本当の話なの?」――
 アイリスは親友の横顔を見上げる。視線に気付いたフェリクスがへらり、と笑った。

「どうだろうね〜。目撃証言には意味があるけど、嘘を吐く理由っていうのは、俺には考えつかないなぁ。ホントの事言ってるの〜?あれ」
「・・・本当かどうかは分からないけど、嘘を吐く理由ならあるよ。相手を貶めたい、とかね。先手を打つ事によって、人間の手で人間の数を減らそうっていう《憑者》の策略かもしれないよ」
「そーだねぇ。まあでも・・・対抗が出ないと分からない、か」
「犯人が誰か分からないと、嘘か本当か分からないって?」
「うん。でもね〜、今のところ、ヴェーラちゃんが嘘を言ってるようには見えないなぁ」

 再び、デュドネを睨み付けるように仁王立ちするヴェーラを見やる。ゆるふわ系、という言葉がピッタリだった彼女はどこへ行ってしまったのだろうか。