2.
かつて――そう、1日目のあの日に集まった、集会所。そこには数える程の人間しかいなかった。
アイリスを含むクラスCの面々が3人。クラスBも3人。クラスAだけが少々多い程度か。さらに教師が4名。各クラスの担任と講師のヘルヴィだ。彼女はまったくもって悪いタイミングで学園内にいたせいでこの件に巻き込まれた。
あれ〜、と隣でフェリクスが首を傾げた。
「どうしたの?」
「う〜ん・・・ハルトくんがいないと思って」
「ハルトくん、って・・・アルハルト?」
「そうそう〜」
アルハルト、と言えば優等生が集まるAクラスの中でも1、2を争う実力の持ち主である。他の誰がいなくなったとして、気づきもしないフェリクスが気に掛ける程の相手なのだが、その彼の姿は見えない。
段々とフェリクスの眉間に皺が寄る。彼等が仲良しだった、という情報は知らないからクラスメイト以上の関係性は無いだろうに。
そうこうしているうちに、クラスA担任、エヴァンが手を叩く。まるで動物でも相手にしているかのような動作だったが、この状況でそれを言及する者はいなかった。
「――エヴァン先生。アルハルトは?」
それを問うたのは少し顔色が悪いオズウェルだった。セレスティアと気のおけない仲だったらしい彼だが、まさに動揺しているようだ。
一つ頷き、小さな溜息を吐いたエヴァンは首を横に振った。
「彼は死んだよ。先生が確認して来たんだから間違い無いさ」
「・・・」
さらりと言ってのけた担任。フェリクスの眉間の皺が更に深くなる。
「フェリクス・・・?」
「う〜ん・・・何だかちょっとショックかなぁ。ハルトくんが負けるって事は、俺絶対に敵わないだろうし〜」
「まぁ、フェリクスは・・・殺しても死ななそうだから大丈夫なんじゃない?」
「ちょっとアイリス。俺を何だと思ってるの〜?あとね〜、何かオズくんの態度がおかしいから・・・」
その続きの言葉は無かった。が、アイリスには彼が何を言おうとしたのか何となく分かったので、突っ込んだ質問を避ける。
温厚に見える皮を被ったフェリクスという青年に対し、ずけずけとものを訊く行為は自殺志願と同義だ。彼に学園だから、という縛りは通用しない。
「あとさ〜、ヴェーラちゃんが全然驚いてないのも個人的には怪しいと思うんだ〜」
「私にクラスAの事は分からないよ」
「気を付けててね、アイリス。この2人は絶対に怪しいからさ」
「ん、了解」
半分は勘だけど、と笑う。頭の後ろで手を組んだその格好は、この重苦しい空気にまるでそぐわない。