1.
とうとう何も進展無く4日目へと突入した。石版によると13日の間に問題を解決しなければならないので、無為な4日間を過ごしたのはかなりの痛手ではなかろうか。
重い身体を引き摺り起こし、大きく伸びをする。あまり眠れた気はしないが、ずっと活動せず横になっていたからか気分とは正反対に身体は元気。担任がえらく心配していたようなので、無理をしてでも授業には出るとしよう――
「アイリス、アイリス!!」
ノックも無くドアの外から聞き覚えのある声が聞こえた。ドアを開けてやろうとして躊躇い、結局ドア越しに何の用かと訊いてみる。朝礼にはまだまだ時間があるし、何をそんなに慌てているのか気になったのだ。
「のんびりしてる場合じゃないんだってー」
「あんたには言われたくない!」
「生き残り生徒は全員、集合だってさ〜。いや〜、随分人減っちゃったみたいだねぇ」
フェリクスの呑気な声で言われると危機感を覚えないが、それはつまり、生き残り召集を掛けられる程度の人数しか、もうこの学園に生き残っている生徒はいないという事になる。
どんな速度で人外達が人間を狩っているのか。想像するだに恐ろしい。
「ほら〜、早く出てきてよ。遅れちゃうからさ〜」
「まだ・・・っ!着替えて、ない!」
「5分で支度してよー。そうじゃなかったら、アイリスは死んでました〜、て先生に伝えちゃうからね〜」
「そういうブラックジョークはウケないと思うから止めた方が良いよ・・・」
ブラックジョークなど生温い。こんなフェリクスの冗談を聞いたら間違い無くデュドネが卒倒してしまうだろう。自分が部屋に送り届けたから、と。それはそれで絶対に面倒な展開になりそうなので、すぐさま制服を着込む。
急げ、と言ったわりにフェリクスはアイリスを作業に集中させるつもりなど無いらしく、ちょこちょこ何やら会話を差し込んでくる。
「ね〜、やっぱりセレスティアちゃんだっけー。あの人、助からなかったみたいだよ〜」
「・・・そうなんだ」
「俺も遠くから見てたけどさ〜、あれはエヴァン先生が止血してても死んでたんじゃないかな〜」
「・・・・」
「ね〜、だからアイリスが気にする事無いよ〜。そーいえば、クラスの人達、心配してたし」
――そんな事を気にしてるわけじゃない。
純粋に友達の死に対して落ち込んでいると言うのに、彼は。いまいち会話の辻褄が合わないのは常日頃からそうだが、少し話の重みが違うのでもう黙っていて欲しい。
小さく溜息を吐き、荷物を持って部屋を出る。
待ちくたびれたのか、壁に寄り掛かって屈んでいるフェリクスが犬のような笑みを浮かべた。