7.
***
「・・・ああ、夕方だ」
部屋に帰ってすぐ、備え付けのベッドに横になっていたアイリスはふと顔に当たる夕焼けに気付いて外を見た。眠ってはいない。何度か夢と現実を言ったり来たりしたが、その度に先程の光景が甦って結局眠れなかったのだ。
閉ざしていた目を開け、眩しい程の夕焼けを見る。まるで血のような色だ。
――トントントン!
速いテンポで3回。ノックの音。こんな慌ただしく人の部屋のドアを叩く人物は、アイリスが知る限り1人しかいない。
「アイリス〜!お見舞いに来たよ〜」
無駄に元気そうな声。野次馬の中には彼も紛れ込んでいたはずだが、まるで朝の出来事など無かったかのようだ。
ベッドから起き上がるのも億劫で、外にいるフェリクスと同じく大声で返す。
「ごめん、今日は誰かと会いたい気分じゃないから。帰って」
「え〜!俺、ちゃんと昼の授業も受けてきたのに〜ぃ?ホントはすぐにでもお見舞いに行こうと思ってた俺にそんな事言うわけ?」
「何でそんなに元気なの・・・」
――あと、授業にちゃんと出るのは当然だ。
もう一度強く言わなければ帰ってくれないようだ。疲れているし、そういう気分ではないので察して大人しく帰ってくれればいいのに。
「ねぇ、フェリクス――」
「あ!そうそう!先生達から、伝言があるよ〜。すっかり忘れてた。あはは〜」
「・・・早く言って」
「うんうん〜。えっとねー、明日から警戒態勢で武装かいきーん!だから、武器も持たずに学園来ちゃ駄目だよ〜」
「え?武装して来いって事?」
「そうそう。先生達だけの手じゃ回らないから〜、自分の身は自分で護れってさ〜」
――こりゃクラスC終わったわ。
漠然とそう思った。単純な戦闘力ならどのクラスにも及ばないし、武装解禁なんて、不意打ちじゃない限りCクラスの生徒が自衛出来るとは思えない。
この解禁で本当に自分の身を守れるクラスはAぐらいじゃなかろうか。
「じゃあ俺、今日は帰るよ〜。明日は元気に来てね〜」
意外にもあっさりそう言って引いたフェリクスに微かな違和感を覚える。彼なら何やかんや言ってももうちょっとドアの中と外での会話に花を咲かせる、なんて少し粋な事でもやらかすと思っていたのだ。
「何だよー、もう・・・」
呟きが夕焼けに吸い込まれて消える。
***
『○月×日 晴れ 3日目
セレスが目の前で刺されたせいか、武装解禁になった。ぶっちゃけ、武装してたって自分の身を護れる気がしない。
明日、また授業があると思うと気怠い。
追記
セレスは結局助からなかった。』