2.
結局、ボーッとしたまま1限の授業を終えたアイリスはこのままじゃいけないと唐突に思い立ち、購買にでも行って飲み物を買おうと教室を出た。気分転換、という名目だが甘い物でも飲めば気が少しは晴れると思ったのである。
――と、そこでアイリスは足を止めた。
クラスBの前でセレスティアとエルバートが話をしているのが見えたのだ。ここで新たな案を思いつく。気晴らしなどせずに、セレスに今の悩みを打ち明ければ良いアドバイスが貰えるのではないか、と。
どのくらいエルバートと話し込むか分からないが、少し待ってみようとその様子を観察する。
そもそも、セレスはBクラスなのでエルバートのクラスだと言う事になる。話している事そのものは不自然ではないのだが、相手がセレスだと言うだけで生活指導なのかと勘繰ってしまうのはどちらにも失礼だろう。
「君は――――成績は――に、何故――――――しないんだ?」
途切れ途切れに聞こえて来る内容。恐らくは成績の事なのだろうが、セレスは鬱陶しそうに眉根を寄せている。しかし、さすがは教師というところで、そんな彼女を前にまったく物怖じしない。
「別に何だっていいだろ。あたしはちゃんとノルマをこなしてる。あとはどうしようと、あたしの勝手さ。担任とは言え、あたしの行動に口出してんなよ」
セレスの声は良く通る。現に、離れた場所に立っているアイリスにさえその声が聞こえるのだ。
ともあれ、彼女のその反抗的な態度にエルバートが溜息を吐いて首を横に振った。お前の発言はまるで見当外れだ、とでも言いたげに。
「・・・ん?」
話が終わりそうにない、とこっそり溜息を吐いたアイリスはその2人から目を離して、そして気付いた。
教師と生徒の喧嘩。野次馬が湧いてもおかしくない、とは思っていたが野次馬という言葉が似合わない生徒の姿を発見したのだ。セレスと同じくBクラスの不良――ハッシュ。
セレスとは腐れ縁のはずの彼が、その会話を食い入るように見ているのはいっそ異様だった。彼なら手を叩いて爆笑し、その後にエルバートに怒られるというのが一般的な流れだろう。間違っても黙ってその口論を眺めているなどあり得ないはずだ。
――何か、ヤバそうだなぁ。
あの2人。ハッシュを怒らせるような事をしでかしたのかもしれない。クラスBで暴れられる分には同じ力量の生徒達がいるのだから問題無いが、ここで暴れられると非力な私が巻き込まれる。そういう一心で少しだけ距離を取った。