2日目

4.



 一先ず、食堂に移動する。傷心のアイリスは部屋に帰りたいと言ったのだが、親友のフェリクスはそれを赦さなかった。曰く、落ち込んでる時に部屋に引き籠もったら余計に気分が悪くなる、との事らしい。
 で、たどり着いた先の食堂だったが、これまた人がいない。いるのは暇そうにしている食堂のおばちゃんだけである。随分と閑散としている。
 さすがに昼食を摂るには早過ぎた為、適当なテーブルに座り、自然な流れで自クラスの事情を報告し合う。話を聞き終えた親友は困ったように肩を竦めた。

「俺のクラスも何人か減ってたよ〜。なーんで他クラスに負けちゃうかなぁ。返り討ち報告も無いしね〜」
「他クラスとは限らないんじゃない?クラスAと教師で《憑者》が構成されてるのかもしれないじゃん」
「あ〜、そっかー。ん〜、でも何にせよ、やっぱり情けないなぁ。俺だったら絶対に負けないのに」

 クラスメイトが何人か死亡しているらしいにも関わらず、フェリクスに落ち込んだ様子は無かった。いつもと変わらず、まったくブレない。いつもならばそれを頼もしく思うのかもしれないが、この状況下でこの態度だとさすがのアイリスも不気味なものを感じずにはいられなかった。
 ともあれ、Aクラスの被害はBとCに比べれば微々たるもので、4人いないからどうしたのかと思えば担任のエヴァンからそういった旨を伝えられたらしい。

「でもさー、顔を見たって人が誰もいないんだよねぇ」
「・・・そういえば、そうかも」
「相手が友達とか知り合いで〜、隠してるのか〜、それとも、出会ったら即死!みたいな事になってるのか。そこ、かなーり重要だよねー」
「誰が来ても勝てる気がしないからあまり重要じゃないよ・・・」
「重要だよ!だってさ〜、今俺と一緒にいてもアイリスが危険、なーんて事になるよ〜」

 ――あんたが危険だろ。
 言い掛けた言葉は呑み込んだ。昨日のフェリクスの理論で行けば、クラスメイト大勢に一緒に出て行くところを見られたのだから、ここでフェリクスに殺される事は無い、ということになる。
 昨日の件が、彼の口八丁でなければ。
 常に締まりの無い笑みを浮かべているその顔を見たところで、フェリクスの意図はまったく読めない。それは日常的にそうで、もう慣れてしまっているからか深く追求した事は無いけれど。でも、それって今の状況下ではかなり危険な事ではないだろうか。
 想像出来る。もし、フェリクスがこちらを殺す気で襲い掛かって来たら。間違い無くこの笑顔のまま、平気で得物を振りかざしてくるだろう。

「どーしたの?暗い顔して〜・・・って、あ!そういえば、友達が、って言ってたね〜。元気だしてよ、俺は無事だったからさー」
「うん、シャールカの事、気になっててさ・・・」
「えー、ホントに?何だか嘘っぽいな〜」

 ――本当は貴方の事を考えていました。
 など言えるわけもなく、首を振る。彼に対してだけでなく、嘘を吐くのが下手なのだ。けれど、今から話す事は本当。話題転換の為とはいえ、本当にそう思っている事だから。

「シャールカ、自室に倒れてたって先生が言ってた。現場はそのままなんだって」
「ふーん・・・」
「何だか、信じられないよね。今もまだ実はドッキリでした、ってオチを期待してたりして」
「行ってみる?」

 ――え?
 聞き返そうと思ったが、楽しそうに笑うフェリクスの目がまったく笑っていない事に気付いてその言葉が冗談ではない事を知った。