2.
点呼を取ると言ったのに、デュドネは名前を呼ばない者、呼んでも返事が無い者などいまいちよく分からない点呼の形式だった。呼んで確認するのだから全員呼んだ方がいいのではないだろうか。
「・・・呼ばれてない者はいるか?」
重々しい言葉。しかし、この場にいる全員の名は呼ばれていたらしく手を挙げて主張する者はいなかった。
すると担任はおもむろに話を始める。悲痛とさえ言える声で。もともと、クラス担任の中では一等心根が優しい教師である。そう言う悲しみの感情を表に出す事は多々ある事だったが、さすがに今回は重傷だ。
「みんなに残念な報せがある。昨日の夜の間だろうな、とうとう犠牲者が出てしまったようだ。一応、名前を読み上げるから――もし、所在を知っている者がいたら俺に教えて欲しい。完全に死亡が確認されている者もいるが・・・」
今度は騒がしくならなかった。代わりにしん、と辺りが静まり返る。沈痛な面持ちで告げられた言葉はおよそ『訓練兵』には縁のないものだ。何だ、死亡って。学院内で死者が出たと?冗談じゃ無い。
淡々と読み上げられていく名前の中にシャールカの名前を聞き、息が止まるかと思った。フェリクス程でないにしろ、それなりの時間を一緒に過ごし、剣術の授業ではエルバートに散々つきっきりで指導された友人が、デュドネの持つ死亡者名簿に載っている事が信じられなかった。
と言うより、この欠席率の多さ。欠席はつまり死者なのかもしれないが、そうだとしたら一晩に何十人もの生徒を《憑者》が殺害している事になる。
「ねぇ、アイリス」
ふと斜め後ろに座るハンスが声を掛けて来た。小さな声だったが周囲には聞こえているらしく、チラチラと視線が刺さる。
「・・・何?」
「欠席者はつまり死亡者って事になるのかな?こんな風になるぐらいだったら、昨日から用心しておけばよかったよ」
――まったくだ。誰だ、フェリクスなら大丈夫だとか訳の分からない理論を平気で脳内に描いていたのは。誰も部屋に入れるべきではない。入って来たのが《憑者》だったらどうする?今頃、あの名簿に自分の名前も載っているのだろうか。しかも、今になって思えばあの部屋でアイリスを殺せばフェリクスが犯人、など穴だらけの論もいいところだ。