1日目

9.



 ところでさ、と最初からずっと疑問に思っていた事を尋ねてみる。

「一人で出歩いて大丈夫なの?っていうか、私に何か用事?」
「ん?あー、えっとねぇ。用事とかは無いかなぁ。遊びに来たんだよ〜」
「それって今日である必要ある・・・?」
「無いかもね〜」
「危ないから一人でウロウロしない方がいいんじゃないの?」
「だいじょーぶ。だって俺強いからさ〜。不意打ちならともかく、さすがに誰かが襲い掛かって来るかもしれない状況でボンヤリとはしてないよ」

 さすがはクラスA。彼等の上にいる強者と言えば教師連中――それもごく僅かの教師達だけで、あとは恐いもの知らずだ。警戒するポイントさえ分かり、不意打ちでなければ彼等が負ける道理など無いのかも知れない。
 妙に納得していると視界の端でフェリクスが満足げな顔をしていた。真意は測りかねる。

「ねぇねぇ、明日の食堂のメニュー、見た?」
「日替わりランチの事?見てないけど」
「明日のBランチがさ〜、揚げ物の盛り合わせなんだよね。だから、購買で買うんじゃなくて食堂にいこーよ」
「別にいいけど、明日の4限目はエルバート先生の剣術授業だから、私外だよ?席取っててよね」
「う〜ん、りょうかーい」

 やった、と無邪気に喜ぶフェリクスが何だか羨ましい。彼は命を狙われるかもしれない恐怖と戦う必要など無いのだ。交通事故と同じ。気を付けてさえいれば、自分が被害者になる事など無い。

「あのさ。イザイアに会ったって言ったよね?」
「どーだろ。俺、あまり他クラスの顔と名前覚えてないんだよねぇ」
「まあ、とにかく人と会ったんでしょ?だとしたら、やっぱり他も私達みたいに部屋を行き来して時間潰してるのかな?」
「そうなんじゃない?だって、部屋にいるの退屈だし〜」

 きっと、フェリクスの言葉は生徒の言葉を代弁している。誰だってこんな早い時間から部屋に缶詰など耐えられるはずもない。そうだとすると、去年流行ったインフルエンザのように、騒動の波は広がっていくのではないだろうか。
 ――石版の話が、嘘でなければ。


 ***


『○月×日 晴れ 1日目
 今日から日記を付けようと思う。色々区切りが良いし。
 石版からのお告げがあった。本当だったら学院内でリアルサバイバルゲームが始まるのかもしれない。



 追記
 私の考えが甘かった。知っていたらこんな不謹慎な事、絶対に書かなかったのに』