1日目

8.



 午後8時半。消灯時間は11時なので、まだまだ自由に出来る時間である。さらに、外へ出る事も可能。厳しい中にある自由時間を如何に楽しく消費するのかが学院で楽しく過ごすコツである。
 ――しかし、こんなタイミングで外を出歩く生徒などほとんどいないだろう。石版の影響力は大きいし、何よりあんな注意をされた後に出歩けば教師に見つかって小言を食らってしまう。

「日記日記、と・・・」

 1ヶ月間放置していた日記の表紙を開く。やる事が無くなれば必然的にこうして日記を書く時間が増える。この騒動が収まるまでは、きっとちゃんと日記を書くことだろう。
 三日坊主なので騒動が鎮圧した後も続くかと問われれば、分からない、と言う他無いが。
 ご機嫌で鼻歌なんか唄いながらペンを取る。栄えある1ページ目には何を書こうか――
 トントン、と控え目なノック音が響いた。びくり、と身体が揺れる。こんな騒動時に来訪者など嫌な予感しかしない。けれど、担任が何か連絡を持って来たのかもしれないし、何より緊急の用件でもあるのかもしれない。
 一瞬だけ間を置いたアイリスはそろそろと立ち上がり、ドアにぴったり耳をくっつけた。外の音を聞こうとしたのである。が、もちろんドアの外から音は聞こえて来ない。不気味な程に静まり返っている。
 ――トントントン。
 もう一度、ノックの音。

「だ、誰・・・?」

 暫しの間。聞こえなかったのだろうか。もう一度聞いてみよう――

「あ、アイリス〜?俺俺、フェリクスだよ」
「何やってんの、あんた」

 安堵の息を吐きながらドアを開ける。勢いよく開けようとしたら、障害物に当たったかのようにドアの勢いを殺された。何だ、と瞠目していれば少しだけ空いた隙間からフェリクスの顔が覗く。

「しーっ!先生達に見つかるでしょ〜」
「あ、ごめん」
「そーっと開けてよ」

 言葉通り音がしないようにドアを開けると右左を確認した親友が滑り込むように部屋へ入る。
 ――そこで、今日の朝、担任に忠告された事を思い出した。

「・・・そういえば、人を部屋に入れるなってデュドネ先生が言ってたような」
「え〜?アイリス、俺の事疑ってるの?」
「そういう怪しげな発言が無ければなー。信用っていうのは日々の積み重ねだと思うなー」
「あはは〜。俺もそう思うよ。まあ、マジメな話するとさぁ、俺がここに来てアイリスを殺す事は無いと思うな」
「何でそういう物騒な話をするかな」
「怖がってるのかと思って。それで〜、ここで俺がアイリス殺しちゃうとさぁ、アイリスが警戒せずに部屋の中に入れる相手ってのがあまりいないから、俺が一番に犯人にされちゃうよ」
「そうかな?」
「そうそう。それに俺、行く時にイザイアくんだっけ?と、合っちゃったし〜」

 だから心配しなくていいよ、と笑うフェリクス。長年、親友なんぞをやっているが彼の論理で安心出来た例しは無い。何故なら、彼は嘘を吐くのが上手だからだ。