6.
「静かにしろ」
――すっかり存在を忘れていたが、集会の最中だった。
恐らくここに集まった全ての生徒がそう思いながら口を噤む。静かになったのを見計らい、エルバートが声を発した。
「役職持ちの者もいるだろう。石版の予言とはいえ、あまり鵜呑みにも出来ない――よって、役持ちは絶対に名乗り出ない事。殺されたくなければな」
他に話す事は、とエルバートが各教師を見回す。どうやら他に言う事は無いようで、各々首を横に振った。
「じゃあ、解散だな。クラスに戻れ」
呆気なく集会は幕を下ろした。ぞろぞろ、と生徒達がゆっくり自分の教室へと移動を始める。その波に流されるようにアイリスもまた自クラスを目指していた。
***
フェリクス、ヴェーラと分かれ、やっとの思いで教室へ入る。意外にも生徒はほとんどいない――というか、クラスメイトのシャールカとクラスBのエラルドが何故か教室の端で話していた。
「ど、どどどどどうしよう!《憑者》とか何とかに狙われたら、私すぐ死んじゃうってぇぇぇ!!」
情けない声を上げたのはシャールカである。彼女は常日頃から何かに怯えている野兎のような子なので、今回の一件は刺激が強すぎたのだろう。何かの間違いだと受け流せない程に。
一方で他クラスのエラルドは落ち着くどころか、シャールカの取り乱し様に驚いているようだった。風の噂によると、彼とシャールカは幼馴染みらしい。
「あー、えーっと、落ち着けよ。ってか、何でそんなに怯えてンの?」
「そ、そうだよね・・・鶏頭のエラルドにはこの異常事態がよく分かってないんだよね・・・」
「ねぇ、喧嘩売ってンの?」
「でも・・・っ!何かあったら、すぐに助けてもらいに行くから!待ってて!」
「いつもじゃね?あ、俺そろそろ帰るから。じゃ」
そう言って本当にエラルドは去って行った。いったい何をしにCクラスまで来たのだろうか――
エラルドが去った事で、必然的にシャールカの視線はアイリスに移る。あ、とか細い声を漏らしてクラスメイトの彼女は微笑んだ。
「アイリスちゃんはどう?こ、恐くない?私はとっても恐いんだけど・・・」
「・・・そうだね、私も恐いな」
「そ、そうだよねっ!私達だけでも気を付けていようね?」
ほっとしたようにシャールカが溜息を吐く。本人には悪いけれど――その姿は、ライオンの前に置かれたウサギのようだ。もし、石版の予言が本当なら最初に脱落しそうな危うさがある。