4.
結局、指定された場所を読み切る間もなく集会が始まった。クラスBの担任、エルバートである。我等がクラスCの担任、デュドネは額を押さえて悲痛そうな面持ちである。
「諸君等に配ったその資料は、王都の石版に昨日浮かび上がった予言をそのまま書き写したものだ」
開口一番にエルバートが言った言葉はザワついていた集会所を静まり返らせるのには十分な一言だった。学院にいながら『王都の石版』を知らない者はいない。それは、いくら脳筋であるフェリクスも当然そうで少しだけ驚いた顔をしている。
なおも、朗々とエルバートの言葉は続く。
「知っているとは思うが、予言盤の効果は絶大だ。何せ、これに書かれた事象は『絶対に』起こる――文字通り、予言の石版なのだから」
随分と早い時期にそれは習った気がする。国を支えるマジックアイテムの一つだ、と。
しかし、古文というか――現代人が使わない古めかしい言葉で書かれていては何を言いたいのか伝わらない。
「本来ならば明日までに要約せよ、という課題を出すのだが今回は俺が要約しよう。何より時間が無い」
300年の歴史を持つ石版。今まで一度たりとも予言を外した事は無い。起こる事象について予言しなかった事はあるが、浮かび上がった文字が間違いを示した事は本当にただの一度も無いのだ。
ともあれ、エルバートの要約はこうだった。
13番目の隊――つまり、訓練兵の中に裏切り者と魔物に憑かれた者がいる。それらが学院を全滅させるまでに、異分子を排除・始末し勝利を手にしなければならない。
期間は――13日。
人間に有利な役職は6つ。ただし、訳の分からない役職が2つあり、さらに役職に当てられた本人でさえ自分がそうであるのか分からない役職が1つ。
1つ。《巻き戻し》。魔物陣営がこの役職を殺すと発動する。ゲームの進行状況がどうであれ、全てを振り出しに戻す役職。訳の分からない役職の1つ目でもある。死んでその先に未来など無いだろうに、突拍子がなさ過ぎる。また、役者にはその人自身にしか見えない時計盤の刺青が刻まれる――らしい。
2つ。《聖騎士》。誰が役職に当てられたのか分からない役職だ。というのも、これがまた曖昧で学院内最強を10日が経過するまでに聖騎士の座に据えなければならない。勝利の条件の一つ、なのだろうか。
3つ。《過去視者》。訳の分からない役職2つ目。何故なら、この役者は過去を見るのではなく、前回のゲームの記憶を引き継いでいる、という役職だからだ。人生に2週目も3週目も無いだろうと盛大にツッコんでやりたい。いれば便利だろうが、いるという事はすでに何度目かこういう状況に陥っている、という事になる。
4つ。《予言者》。実用的な役職だ。何せ、未来の事が漠然にとはいえ分かる。生きた石版のような職なのだ。しかも、疑問はあれど矛盾はない。
5つ。《共振者》。実用的ではあるが、実は使いたくない職。単純な役職で、自分を殺した相手を道連れにするものだ。
6つ。《解析者》。1ゲームにつき1名限定でその人の役職を知る事が出来る。これもまた、存在が頷ける役職だ。
これで絶対的に人間陣営寄りの役職は全部だ。残りは――
「何かこれ・・・どっちにも使えそうな役職だよね〜」
字を読むのに疲れたらしいフェリクスが不満げにそう呟いた。