3.
エヴァンが離れて壇上へ戻っていったのを確認し、手元の資料に視線を移す。それは、何かの要約だった。
『裏切リヲ内包セシ13番目ノ隊ヘノ予言デアル』
書き出しはこのようなものだった。どことなく片言で、文法的に間違いなんじゃないかと思われるような文がつらつらと書かれている。どこか不安にさせるような響きだ。
どうにか解読を試みるアイリスだったが、挫折者は案外とすぐ近くにいた。
「え〜、何コレ。ワケ分からないなぁ」
「私も分からないよ、フェリくん!」
「そーだよねー」
クラスA二人の視線がアイリスへ向けられる。まさかそんなにすぐ音を上げるとは思っていなかった。まだ全文すら読んでいないというのに――
「最初から最後まで読んだけど、何の事?って感じだよね」
「そーだよねぇ。何だかさーぁ、説明も要領得ないし〜、何ー裏切り者ってー、って気がするよね〜」
――あ、読んだ上での感想か。
さすがは優等生。こんな継ぎ接ぎめいた字を一応上から下まで読み終えるとは。単語のまとまりが意味分からなさすぎていまだ半分しか読んでいない自分とは大違いだ。
と、ヴェーラが横から覗き込んで来た。
「読んだ?アイリスちゃん。意味分からないよね」
「えっ・・・あ、うんうん!全ッ然、分からないよね!」
「わ〜、まだ読み終わってないんでしょ、アイリス。ホントに嘘吐くのが下手だよねぇ」
「フェリクスッ!」
怒らないでよ、とフェリクスが笑う。彼に悪気は無いのだ、悪気は。ただちょっと空気が読めないだけ――だと思いたい。
ヴェーラに呆れられたかと思ったが、彼女は微笑ましそうな顔をしていただけだった。呆れられたのではなく、馬鹿にされたのだろう。そちらの方が妥当だ。
すると、横から機嫌直してとフェリクスの手が伸びてくる。その手といえば、今必死にこの文献を読み解いているアイリスの視界を遮ってプリントの上を滑っていた。
「ちょっと!今読んでるでしょ!」
「全部読む必要無いからさ〜、ここと・・・ここだけ、読むといいんじゃないかなぁ」
爪でぎぎぎ、と線を引く。プリントが破けるのではないかと危惧したが、フェリクスはそんな失態など犯さなかった。
面白がったのか、ヴェーラの手もまた反対側から伸びてきた。
「待ってよフェリくん。ここも読んどいた方がいいよ。だってほら」
「あ〜、うん、そうだね〜。俺は全然どうでも良かったから、見落としてたよ」
「あっ・・・え・・・ドウモ・・・」
「頑張って、アイリスちゃん!」
左右からやんややんやと応援されて若干恥ずかしくなってきたが、今更「もう読まない」とは言い出せない雰囲気である。