No.001

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 外に出てまずした事はポケットの中のスマートフォンを取り出す事だった。電話帳を開き、部下の1人の名前に行き着く。

「電話を掛けるのですか?」
「おう、式見にな。情報関係ならあいつに頼んだ方が早い」

 言いながら通話ボタンをタップ。一瞬の後、プルルルルというコール音が鼓膜を叩く。5度目くらいの着信音で聞き覚えのある低めの若い声が鼓膜を叩いた。

『もしもし。どうかしたのか、旦那』

 謎の安心感のある落ち着いた声だが、声の主は大学生である。彼の名前は式見颯人。神社の三男坊で霊力値もかなり高く、且つ戦闘向きの《うろ》を2体も連れた12支部の看板のような存在だ。

「おう、今いいか?ちょっと頼みたい事があるんだが」
『取り敢えず話を聞かせてみてくれ』
「支部の近く、昭和町にある廃屋の家主について調べて貰いたいんだが・・・。まあ、依頼人も落ち着いてるし時間があるときでいい」
『自分で捜す気はねぇんだな、旦那。そりゃいいが、時間が掛かるなら仕事と被るから明日以降の報告になるかもしれないな』
「おーう、んじゃそれでいいや。俺は電話には出るようにするから、調べ次第連絡してくれ」
『了解。ところで、土産は何が良い?あんたの所の《うろ》は酒で良いって言ってるんだが』

 土産。そういえば彼は島の方に出ているんだったか。ならそこでしか買えない例の酒瓶でいいのでは。
 一瞬だけ依頼の事も忘れてそれでいい、と電話越しのよく出来た部下へ言葉を返す。二言三言の依頼報告を受けて電話を切った。

「霧咲殿」
「あ?どうした?」

 スマフォをなおしたと同時、月白が心配そうな声を上げた。何だ何だ、と視線の先を見れば出て行ったはずの芽依が車の傍に蹲り、その背を紅鳶が擦っていた。何かあったのだろうか、とても平常時の状態には見えない。
 慌てて駆け寄った。自分より霊力の高い芽依だ、山野の家にいた『何か』に宛てられたのかもしれない。

「おい、大丈夫か?何で車に乗っておかないんだ」
「鍵!鍵が無かったんだよ!オッサンどうして鍵掛けてったんだ?」
「いや掛けるだろ。置き引きにあったらどーしてくれんだ」

 見当違いの抗議の声を上げたのは紅鳶だった。温厚であまり人に当たったりしない彼だが、この時ばかりは非難がましい目を向けている。というか、それなら「何故鍵を渡しておかなかった」、が正しいのではないだろうか。