合崎神無が行方不明になってから1週間が過ぎた。須賀華天は夜宮言と供にとある池の前に来ている。スケールの小さい日本でこれを池と呼べるかどうかは疑問だが、地図によるとここは『池』らしい。
「昨今、連絡機器の発達で人捜しが楽になったのは良い事ですね」
不意に言がそう呟いた。その言葉には多分に皮肉が含まれている。まったく同じ気持ちではあるが、不謹慎なので黙っていたというのに。この男は。
「どうします?重機でも引っ張って来てサルベージしますか?もっとも、沈んでいるのが彼女だけだとは限りませんけれど」
「水を全部抜いたって捜してる人間は見つからないだろう。無駄足だよ」
「分かっていますとも!言葉のアヤというやつです!」
暗く濁った水の底に目を凝らす。当然、池の底など見えるわけもなかった。
目を細め、スマートフォンの画面に視線を移す。画面には周辺の簡易マップが表示されていた。そして、1本だけ立っているツメ。
――協会から支給された合崎神無のスマートフォン電波情報の発信点である。本来なら個人情報なので教えられる事は無いが、今回は別の話なので目を瞑って貰っている状況だ。
「どうなっているんだろうね、これは。いくらスマフォが防水だと言っても、まさか水底に1週間も沈んでいて絶えられるとは思えないが」
「ふふふ、ブラジル辺りにいるのかもしれませんねぇ」
「馬鹿、だったらこんな場所にツメ立たないだろう」
合崎神無の現在位置。
池の上――もしくは、池の中。