第10話

02.


 ギルドの裏手に回ると、アレクシアさんは少しばかり疲れたような顔で事の概要を話し始めた。

「それがね、朝の――11時くらいだったかしら。またアイツが来たのよ、オルニス・ファミリーのボス、アルデアが!」
「ええ?何の用だったんですか?」
「あんたを捜してるみたいだったわよ。ラルフとコハクが怪我をしたから、今は裏で休んでる。ちなみに、マスターは丁度出払ってていなかったわ」
「えっ、それでアルデアさんはどうしたんですか?」
「ミソラがいないって分かったら帰って行ったわよ。また来る、って言ってた」

 ――本気であの人、私を仲間にしようとしているんだ……。
 冗談で言っているのだと思っていた。私なんて殺人ファミリーに入った所で役に立たないだろうし、何より足を引っ張る事は明白。彼が私をファミリーに入れて得するとすれば、このギフト技能を好きなように使える事だろう。

「あんたの事、仲間に勧誘したいって言ってたわよ」
「ど、どうしましょうか……」
「ミソラ、一時ギルドでの活動は休んだ方が良いと思うわ。アイツ、ギフトのせいで攻撃が通らないのよ。あんたがギルドにいなければ、諦めて帰るでしょ」

 休む、という選択肢は無かった。意外にも繁盛しているこの運送業は、ほとんど毎日依頼が届く。しかも、最近ではギルドまで足を運ばなくてもいい、という制度まで作ってしまった。
 つまり、客のおよそ半数は私がギルドにいない事を把握していない。
 だが、アレクシアさんが言う事は尤もだろう。何せ、怪我人が出ている。どの程度の怪我をしたのかは分からないが、手当てを受けなければならない怪我だ。
 やはり、彼女の言う通り、暫く休業した方が良いのだろうか。

「――話し込んでるところすいませんけど、アレクシアさん、コハクさんが呼んでますよ。怒り心頭、って感じで」
「えっ!?」

 唐突に現れたイザークさんがそう言った。口調からしてコハクさんはかなりご立腹らしいが、彼に表情は無い。いつも通りの淡々とした態度である。

「ほら、君も中へ戻れば。それと、休むつもりなら事前にそう言ってよね。僕だけギルドへ来たってやる事無いんだから」
「あ、はい」

 ともあれ、コハクさんが呼んでいるとの事だったので、私とアレクシアさんは恐々とした表情で中へ戻った。
 そこには先程までいなかった人物が3人、増えている。
 コハクさんとラルフさん、そして大きな袋を持ったフェリアスさんだ。丁度出払っていたらしいギルドマスターは買い物に出掛けていたらしい。