夏休み企画

01.


 午後8時。辺りはすっかり暗くなり、虫の鳴き声だけが響いている。車の音は遠い。目の前にはつい先々週まで使っていた学舎が不気味に佇んでいた。勿論、電気の点いている教室は1つもない。

「誰も来ないわね。まあ、彼等が時間通りに来る事なんて無いと思っていたけれど」
「まぁまぁ、珠代ちゃん。私達が5分前行動だったのか悪いんだよ、きっと・・・」

 苛々とスマフォの画面を点けたり消したりしている珠代ちゃんを宥め、運動場の向こう側を見やる。誰か入って来るならやはり校門があるあの辺りだろう。
 しかし、正面に立っていた珠代ちゃんが「あれ」、という顔をした。私と向かい合って絶っているのだから、珠代ちゃんは私の向こう側に何かを見たに違い無い。振り返ってみれば爽やかそうに見えて、その実は不気味な笑みを浮かべた須藤くんが立っていた。その隣には大あくびをしている清澄くんもいる。
 ――でかした須藤くん!
 学校からそのまま待ち合わせする時は遅刻しない清澄くんだが、こうやって何時に現地集合という方法を取る時は大抵遅刻。途中参加である事が多い。それを見かねてか、どうやら行きに須藤くんが清澄くんを連れて来てくれたようだ。

「こんばんは。2人とも早いね。俺も次からはもう少し早く来ようかなあ。ああでも、清澄が支度していれば間に合わないなんて事は無かったけれど」
「悪かったっていったやん。あー、こんばんは。俺より後に来る奴がおるとか、新鮮な気分やね」

 そう言って笑う清澄くんはどれだけいつもより早く来ようがやっぱり清澄くんだった。決して悪びれない。

「清澄くんが大遅刻しないだけでも良い事だよ。何か元気出て来た」
「あなたはそれでいいでしょうけれど、私はそうはいかないわよ。遅刻は遅刻」
「あっはっは、清澄じゃなくて俺もいるんだけどなあ」

 快活に笑ってみせた須藤くんはしかし、目がちっとも笑っていなかった。蔑ろにされてご立腹らしい。

「そういえば、清澄くん達はどこから入って来たの?見てたけど、校門じゃない方向から来たよね?」
「ああ、裏門を飛び越えて来たっさ。俺達は裏から入った方が早かけんね」