第4話

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「――にしても、ワルギリアの奴はどーしてっかね。あの小娘、今回ばかりはあまり野放しにしねぇ方が良いんじゃねぇかなぁ・・・」

 再びエーデルトラウトがそう言うので思考を打ち切る。
 ――小娘。アリシアは本人から本人の情報を聞く事、それを望んでいるようだがそれは大きな間違いだ。どんな意図こそあれど、ワルギリアを知る為には他人から話を聞いた方が早い。きっと、彼女は鏡にしか写らない幽霊のような存在なのだ。
 ワルギリアと名付けられた彼女を知るには、他人という鏡を覗き見る他に方法は無い。
 ともあれ、その小娘という言葉は些かの違和感を覚えた。まるでそう、トラウト本人はワルギリアの事を若輩扱いしているように聞こえるからだ。事実そうなのかもしれない。だとすると、彼等の関係性は本当に保護者と子供のようなそれだったのだろうか。

「あんたが誰かの心配をするなんざ、珍しいな」
「いや、船の上で言ったろ?ワルギリアはヴァレンディアが嫌いなんだよ。ま、俺も例に漏れずってところだが」
「ふぅん・・・」
「その師匠って奴が死んでから寄りつかなくなったんだと」
「死んでんのか・・・哀愁って言葉、あいつ知ってたんだな・・・」

 哀愁ねぇ、とラジオはその言葉を一笑に付した。それはない、と言わんばかりである。ただし彼の不明瞭な物言いからして詳しくは事情を知らないようだ。

「奴に愛国心だとか、師弟愛だとかがあるとは到底思えねぇな!面白い冗談じゃねぇか!ギャハハハハ!!・・・俺もよくは知らねぇが、外へ行きたくなさそうだってのは嘘じゃないぜ?」
「ハァ?あんたの勘違いじゃねぇの?嫌なら嫌だって言うだろ!しかも、外に連れ出したのはアリシアだぜ。嫌だったら断ってるって」
「だよなぁ・・・うーん、そこそこの付き合いがある俺でもその辺りはよく分からんな。これがジェネレーションギャップってぇやつか!」
「自虐ネタは俺にも深刻な心の傷を残すから止めてくれないかな・・・」

 ちなみに、とクライドは話を変えた。これ以上、ワルギリアの話を聞いていてもつまらなさそうだったし、何より他に気に掛かる事があったのだ。

「あんた、結構人の事見てるよな。いや、どーやって見てんのかは知らねぇけど。他の面子はどーなんだよ」
「どう、って何がだよ!ヒッヒッヒ、面白い事聞くじゃねぇか!」
「あんたの観察眼を以てして、今のアリシアは何企んでんのか聞かせてみろって」

 そうさなぁ、と昔話をする老人のように。少しばかりの真剣な声に気圧されつつもクライドは続く言葉に耳を傾けた。年の功、とでも言うのだろうか。彼の発言は当たりはしないかもしれないが思考するのに足る情報だと思っている。
 この終わりの見えない旅を、或いは自分の目的を整理する為の。他力本願と言われようが知ったこっちゃない。