「彼氏に言って貰いたい言葉」
私が呟けば何故か自室に上がり込んできた不知火紫苑とその弟松葉が顔を上げた。赤様に何を言っているんだろう、という顔。
しかし、私の小説のネタ探しに貢献してもらいたいのでもう一度同じ言葉を呟く。
「彼氏に言って貰いたい言葉。ネタにしたいから答えて欲しいなあ」
「皇居内でそれを訊くのは無理よ。だってわたし、政略結婚の道具でしかないもの」
「重いッ!けどほら、何かこう・・・あるでしょ?」
「そうねえ」
うーん、と一頻り悩んでから、ぽんと紫苑ちゃんが手を打つ。
「凛凛に訊きなさいな。あの子なら何か答えてくれるんじゃない?」
「でも今いないし・・・」
あーもう、と松葉くんが口を挟む。少し怒気の混じったそれ。
「ちょ!俺が何の話してんのか分からねーだろ!俺も交ぜろよ!べ、別に寂しくなんてねーんだからな!!」
――ツンデレぇぇぇぇ!!
一人で悶えていれば紫苑ちゃんと松葉くんの会話が耳に届く。
「ドルチェは今の言葉が良いみたいよ」
「はぁ?なんでだよ」
「知らないわ」
がっ、と不審者を見る様な目でこちらを見ていた松葉くんの肩を掴む。
「いいかい、古来からツンデレというのは――」
この後、私の説法が数時間続く事になるのだが、尺の関係上でカット。