「うっうっ、うっ・・・」
泣きながら酒を煽る主――カメリアを前にイライアスは困っていた。ヤケ酒なるそれだったが、正直な話巻き込まれる側にしてみれば迷惑な事この上無い。
「・・・カメリアさん。どうしたんすか、いきなり」
「いきなり、じゃないわよぅ!わぁああああ、あ、あたしの一番弟子が・・・っ!帝国なんかに嫁いじゃって・・・!!」
「じゃあ行かせなきゃよかったじゃないですか」
「だってうち金欠なんだもん!!」
「いや最低だな!」
なおも泣きながらウイスキーをがぶがぶと飲む。酒には強い方の彼女だったが、すでにどれ程飲んだのか。酔いが回っているようだった。自宅なのでこのまま眠っても全然問題無いのだが、絡まれるのは幾らか鬱陶しい。
どうしたものかと思案していればどんっ、と目の前にグラスを置かれた。
「あんたも飲みなさいよっ!!」
「いや、俺は職務中なんで遠慮します」
「仕事なんて無いでしょう!?あたし、あんたに何か頼んだっけ?」
「貴方が酔い潰れたら誰が寝室まで運ぶんですか・・・」
「うるさいうるさいっ!いいから飲めバカッ!!」
瞬間、身体が硬直して動かなくなる。いくら酔っていようと魔女は魔女。何らかの魔法を使われたらしい。
意志に反して身体が動き、グラスを手に取る。
「飲みますよ、飲みます」
観念したイライアスはそう声を上げた。途端、身体の支配権が戻ってくる。
溜息を吐いたイライアスは注がれたウイスキーをごくりと飲み込んだ。喉を通って行くアルコールがむしろ痛い。どんな度数だこれ。
「あーあー、次はあんたがどっか嫁いで行っちゃうのかしらね、イライアス」
「俺は男なんで嫁ぐはちょっと違いますよ。あと、まだ一時はこの村にいるんじゃないすかね、はい」
「何よ、ふんっ!」
カメリアの愚痴を聞きながら、度数の高いアルコールを置き、代わりに栓の開けられていない――ドルチェが買い溜めていたソーダというジュースへ手を伸ばした。