「あらあら、とってもお似合いですよ、ドルチェ様」
「えぇ。似合っているわ」
従者である凛凛と第二皇女、不知火紫苑が微笑む。
ここは私の部屋だ。唐突に押しかけて来た彼女等は手に手に着物を持っており、完全に外の世界から来た私に民族衣装は似合わないとそう言ったはずなのだが、気付けば着せ替え人形になっていた。
彼女等の言葉がお世辞なのか、或いは本気なのかは分からないが、私は照れた顔を誤魔化すように顔を背ける。
「うぅ・・・まぁ、お茶でも飲んで行って・・・」
ぱんっ、と手を叩けばティーセットが出現する。一度魔法を目の当たりにした紫苑ちゃんは驚かなかったが凛ちゃんは少し驚いたようだった。
「いいですね、異国のお茶会というものは。私、この国からあまり出た事がありませんから」
「そうねぇ。わたしも基本的に外へ出た事は無いわ」
今まで魔女村しか知らなかった私と大差無いらしい。
そうだ、と紫苑ちゃんが手を打った。
「ねぇ、わたしにも貴方の国の服を貸してくださらない?着てみたいわ、ふりふりのドレスとか」
「そういえば、東瑛にはフリルがあまり無いね」
「えぇ。基本はこういう着物ばかりですし・・・何より、色は派手ですが、フリルという文化はありませんからね」
もちろん、リアディ村にフリル服ばかりあるわけではないが、それでも私だって女の子なのでらしい服は数着持っている。
着付けをしてもらったお礼に、と私は再び手を打ち鳴らした。
まさか、倉庫奥で眠っている彼の服達を使う日が来るとは・・・。