君の名前にアンダーライン

「おぉぉっ!」

 昼休み。空き教室で弁当を食べながら校内新聞を何の気なしに見ていた佐伯京也は奇声を上げた。隣でパンを食べていた篠崎祐司が心底迷惑そうな顔をする。

「煩いな。何や」
「見ろ、これっ!!」
「・・・校内新聞がどないしたん。俺には普通の新聞に見えるんやけど」
「ここだよ、ここ!!」

 指さした先を見て、祐司が呆れた風にあぁ、と声を漏らした。

「無灯先輩、ね」

 校内新聞においての女子ジャンル別ランクという悪巫山戯の産物。その、電波系部門第一位に輝いていたのが無灯志紀だった。正直、この記事で彼女が一位じゃなければ「何だこの巫山戯たランキング」で全てが終わっていただろう。
 だが、その代わりと言ってはなんだが、祐司はいつも通りに冷静だった。

「何や電波ランクて・・・失礼極まりないわぁ。そのうち廃部になるで、新聞部」
「余所の新聞部は忍者みてぇに校舎内のスクープ集めてるらしいぜ」
「うちの新聞部は無能もええとこやんなぁ。もっと他に記事にする事ぐらいあるやろ・・・」

 ふんふふーん、と鼻歌を唄いながら赤ペンで志紀の名前に線を引く。

「無いわぁ・・・」
「引くんじゃねぇよ!」

 変態でも見る様な目つきの祐司が盛大に溜息を吐いた。