隠し続けた僕の本当

 今にも雪が降りそうだ。吐き出した息も白く染まる、学校の帰り道。
 帰りは宮路慎や草薙人志と帰るのが常だったが、彼等は今日、帰りに寄り道をするらしいので辞退させてもらった。今日はそういう気分じゃなかったのだ。
 久しぶりに一人で帰るな、と~代青葉は嘆息した。
 薄い色をしたマフラーを巻く。さらに手袋をはめて完全防寒。

「あれ?」

 そうして部室から出た青葉は少しだけ驚いたように首を傾げた。

「やぁ」

 これまた自分と似たように寒さ対策に準じている、赤羽美風の姿があったからだ。
 一緒に帰る事自体は珍しくないのだが、約束もしていないのに彼女が自分の前へ現れるのは、ひょっとすると初めてかもしれなかった。
 何と声を掛けたものか。
 そういう雰囲気に気付いたのか、彼女はやや曖昧な笑みを浮かべた。

「あぁ実は、部室の前を通ったら君がいきなり出て来ただけだ。他意は無いよ。ただの偶然だからね」
「へぇ・・・。じゃあいいや、帰ろうか」
「うん?」
「折角会ったんだから、帰ろうよ。それとも、僕と帰るのは嫌かな?」

 いいや、と少し笑った風な美風は首を振り、静かにいつもの立ち位置へ戻る。もの凄い必然力だが、不思議とそれは気にならなかった。