1.
朝日が眩しい。また月曜日がやって来た。昨日までは休みだったが、今日からまた学校である。
寮の自室で月曜日の存在意義について考えながら、いつもの習慣で早起きしてしまったのを勿体ないと呟く。もうあと10分は眠れただろうが、これも月曜日の魔力と言うものですっかり目が醒めてしまった。
目覚まし時計を切り、仕方なく机に向かう。朝食は朝礼の後に摂る決まりだから、少々口寂しい。
「・・・あー、もう1ヶ月か・・・うん、そろそろこれどーにかしないと」
机の上で存在を主張している分厚い本――に見せ掛けた日記帳。普通の女の子ならばこんな大きな日記帳は使わないだろう。だが、アイリスはアンティーク趣味だった。この古代の魔道書を模したような日記帳に一目惚れしたのだ。もちろん、煤けているように見えるのは仕様である。
ちなみに、1月前に購入し、1回も開かず何も書かないままだ。日記を書く、と親友に豪語していたのだが未だ有言実行には至っていない。このままでは仕様でも何でも無く、本当にこの手帳が埃被ってしまうだろう。
――よし、今日から。今日から書こう。そうしよう。
言い聞かせるように心中で呟き、栄えある1ページ目を開く。そうして、手近にあったペンでそのページに日付を書き込んだ。アイリスなりの決心なのである。
「おーい、アイリス〜。もう起きてる?」
ドアをノックする音と同時に間の抜けた声が鼓膜を叩いた。まだ寮を出るまで少し時間があるが、恐らくそれを知った上で人様の部屋の前に立っているのだろう、彼は。
声だけで誰が外にいるのか分かった為、返事もそこそこにドアを開けてやる。
「おはよ〜。早起きしたから遊びに来たよ、アイリス」
「私が起きてなかったらどうするつもりだったの・・・」
「窓から入ってたかな」
「犯罪だからねそれ!私以外にはしないようにしてよ、生活指導受けるから!」
実際、1階の部屋で窓の鍵を掛けずに寝ている生徒は多い。夏場は暑いから開けている、というのもあるだろうが規律が厳しいこの学院で『ドアが開いていないから窓から入る』などと馬鹿げた事をやらかす人間はそうそういないのだ。
ともあれ親友――フェリクスは締まりの無い顔で笑った。こちらも脱力してしまいそうな笑みに注意する気力が霧散する。