「占いの結果、嘉島勇斗は人狼だ」
朝、村人――そして正体不明の人外達が集う中、開口一番に言ってのけたのは自称、占い師こと草薙人志だった。ふん、と自信ありげに鼻を鳴らし悠々と席に腰掛けている勇斗を指さす。
一斉に、常に陽気な彼のもとへ視線が集まった。
そこにはもちろん、眉間に皺を寄せる嘉島勇斗の姿が、ある。
「俺が人狼、やて?」
「ったりめーだ!占いの結果は嘘を吐かねぇからな。今日の話し合いは嘉島吊ってお開きだろ。なぁ?三城」
――三城成実。共有者だ。唯一無二、絶対に信用出来る、人間。
もう片方は今だ姿を見せていないが、難しい顔をした成実は静かに一つ息を吐き出した。彼と、勇斗は親友なのだから無理もない。
「・・・なぁ、草薙」
「あ?何だよ」
自分が吊られるかもしれない、そんな状況下でなお、勇斗は笑みを崩さなかった。人当たりの良い笑みを浮かべ、首を振る。
「お前、狂人か人狼やろ?あぁでも、俺の中で狂人は処理したつもりやから、人狼か。あるいは妖狐やろな」
「はぁ?何を言って――」
笑みの種類が、変わる。人当たりの良いそれから――まさに、表情のない笑みへと。一切の温度が感じられない、絶対零度の双眸がゾッとする程に鋭利だった。
「――共有者カミングアウト。相方は三城成実・・・間違い無いな?」
「あぁ。俺の相方はお前だ、勇斗」
くすり、と勇斗が嗤う。
残念だったな、詰めが甘かった、あっさり引っ掛かって――馬鹿め。
「うーん・・・となると、草薙は偽占い師だから・・・」
「せやな。今日の吊りは草薙で決定や。異論は・・・まぁ、無いやろな。あってもええけど。まとめて両方吊ったるわ。で?狼の草薙くんは、何か言い遺した事でもあるわけ?」
笑っているが笑っていない、そんな笑みを手向けられて――人志は嗤った。破綻した自分に残された道など、あるわけがない。
見る、視る、観る――
残った仲間達の視線の先を、表情を、仕草を。これから何をすべきか、見定める為に。
「・・・あるぜ、言う事」
「おっ!聞いとこか。何なん、それ」
ぱちり、と手を合わせて楽しそうに問う共有者の表情を見ること無く、吠える。
「まだ狐は生きてるぞ!悪ぃ!俺、初っ端で吊られちまって最期の足掻きもクソもねぇけど、絶対に勝てよ!」
「はい、ありがとさん。狐は――まぁ、それに関しては俺も処理出来てない思てたわ」
「そうなのか、勇斗?」
「せやろなぁ・・・吊った感触無いし・・・ま、まだ序盤や。今から詰めて行けば間に合うやろ」
そう言って、嘉島勇斗は嗤い、三城成実は微笑んだ。
三城成実:共有者
嘉島勇斗:共有者(潜伏)
草薙人志: 人狼占い師