慈しみの毒薬

お題サイト「Mercy Killing」様よりお借りしました。


 アルフレッドの講義を終えた真白は友人と並んで歩いていた。彼女はネット小説家で、本来ならば音楽系統の講義は取らずともいいのだが何故か自分と一緒に講義を受けたがる変人だ。名前はドルチェと言う。

「真白ちゃん、購買寄って行かない?甘い物が食べたいんだけど」
「ええ。貴方の奢りならね」
「いいよ、ポイント余ってるっていうか私の旦那様がお金持たせてくれてるから」

 どうやら彼女、社会人の婚約者がいるらしい。同居していると言っていたし、結婚詐欺の類では無さそうだ。もちろん、真白は彼女の婚約者になど会った事は無いのだが。
 奢れとは言ったものの、その他に飲み物も買いたかったので財布の中身を確認。するとふとドルチェが足を止めた。

「ねぇねぇ、あの人、また来てるよ」
「え?」

 顔を上げて彼女の視線の先を辿る。黒い至って普通の車。中にはスーツを着た男が乗っており、黙ってこっちを見ていた。しかし、真白は冷静に携帯電話を取り出す。
 ――メールが一件。
 開いてみれば予想通り、車の運転手であるディラスからだった。迎えに来るという旨のメールだったが1時間前に届いたらしい。あまりケータイを使いこなせていない真白はその電子機器をチェックするという概念が抜け落ちていた。

「――帰る」
「そうなんだ。ま、仕方ないね。じゃあ真白ちゃん、また明日」
「うん」

 躊躇い無く友人に背を向けた真白はやや退屈そうにしているディラスの元へと足を向けた。