週休7日


お題サイト「Discolo」様よりお借りしました。


「おーい、ブラウン!」

 学校を出る10分前。次男のダレルが話し掛けて来た。もちろんブラウンはそろそろ家を出なければと自前の弁当をバッグへ詰めているところだ。
 そんなところへ陽気にやって来た社会人だが常に家にいる兄は満面の笑みでこう宣った。

「俺、今日バイトだったわ。弁当作ってくんね?買うと高いからさ、頼むよ」
「ハァ?ふざけんな!俺はもう出るよ、家!自分で作れよ」
「だってお前今日、食事当番だろ?」
「兄貴が学校まで送って行ってくれるなら考えるけど」
「バイト7時半からなんだよね」
「もう7時だけど遅刻だろそれ!」

 だから困ってるんだって、と笑う兄はまだ寝間着である。しかもだらしなく髪があちこち跳ねており、とても外に出られる格好ではない。しかし、彼の為に学校を遅刻するのは途轍もなく馬鹿らしい気分だった。

「悪いけど、自分でやって。俺、もう行くからな」
「えぇえええ!ちょ、待ってよ弟!」
「それ、ちゃんと家に金入れてから言えよ社会人!!」
「何でだよ収入は関係無いだろ!」

 俺は将来ヒモになるんだと最低の決意をしながら兄が泣きついてくる。どうして計画的に行動出来ないのだろうか。長男を見習えとは言わないが、ダレルとアレクシスを足して2で割ったら完璧人間が生まれるのではないだろうか。
 縋り付いてくる兄を振り払い、鞄を持つ。まだ5分はゆっくり出来るはずだったが、こんな事ならさっさと家を出た方が良い。
 振り返らず玄関まで進み、それでも一応兄の事が気になったブラウンは隠れるように背後を見た。

「お、ソーメンあんじゃん。これ持って行こー」

 誰かがコンビニで買って来たらしいソーメンを見つけたダレルが嬉しそうな声を上げていた。それを冷蔵庫から取り出した際、何かひらりとメモが落ちる。
 ――『グロリアの昼ご飯』。
 そう書かれたメモ。そういえば、次女の弁当は作らなくてよかったんだったな、とそこまで考えてダレルが彼女にぶちのめされるところまでイメージしたが、結局ブラウンは何も言わず家を出た。