情緒も何もあったもんじゃない


お題配布サイト『Mercy Killing』様よりお借りしました


 平日、朝6時。
 眠たい目を擦りながら三男のブラウンは台所に立っていた。親が二人とも海外へ仕事へ行っている今、残された兄弟達だけで生活していかなければならない。これもその一貫だった。
 ――一週間に何回か回ってくる、食事当番、掃除当番等々。
 今日は朝食を作る当番の日なのだ。せめて土日にして欲しかったのだが、働きづめの姉の事を考えるとそれを口に出すのは億劫だった。それに、朝が早いのは学生であるブラウンだけではない。

「ブラウン、コーヒーを淹れてくれないか」
「ああ、待って兄さん」

 2階から下りてきた兄がぼんやりした顔でそう言った。長兄であるアレクシスは常にこのテンションでいつでも寝起きのような態度だ。
 淹れたコーヒーに適当な量の牛乳を足す。ブラックは絶対に飲まないが、少しでもミルクの類が入っていれば口を付けるのが彼だ。というかブラックとカフェオレの違いが分かっているようには見えない。

「兄さんは何でブラックは飲まないわけ?」
「何故、そんな事を訊くんだ」
「いやだって、『ブラックしか飲みません』って顔してるだろ?苦い物、苦手だったっけ?」
「いや――」

 ちょっと牛乳の残量が少なくて限りなくブラックに近いコーヒーに視線を落とした兄は首を横に振る。ブラックが飲めないわけではない、と。

「正直な話、カフェオレもあまり好きではない。というかコーヒーがあまり好きではない」
「じゃあなんで毎朝飲んでるの・・・目を醒ます為?」

 それは暗にいつも眠そうな顔してるくせに、という意を含んでいたがアレクシスは気付かない。それどころか弟の問いに兄は至極当然そうな顔でこう答えた。

「色が好きなんだ」
「兄さん、次から兄さんの飲み物、麦茶でいい?」