お題サイト「Mercy Killing」様よりお借りしました。
「先輩!部活お疲れ様でした!さ、帰りましょうかっ!!」
今日も今日とて、朝比奈深夏は一般的に言う『ストーカー行為』に精を出していた。自分ではそう思っていなくとも、友人から聞いた話によると通報されても文句を言えないレベルらしい。もちろん気にしちゃいないが。
こうしてテニス部である梧桐章吾の帰り道に立ち塞がり、一緒に帰ろうと誘うのは最早何度目か分からない。が、ともかくいつも通り、常習化している待ち伏せ行為。
ちらり、とこちらを見た章吾と目が合う。
「・・・帰るか」
「えっ!?」
「何をボーッとしている。帰らないのか?」
「え・・・えぇっと、帰ります・・・帰ります!」
「なら早く歩け」
自然な動作で隣に並ばれる。いつもは数歩先を前だけ見て歩いている、あの先輩が。扱い的には今の方が断然良いだろうに、深夏は混乱していた。先輩に熱があるんじゃなかろうかと。
「せ、先輩?具合でも・・・悪いんですか?」
「はぁ?具合が悪いなら部活なんてせずに帰ってるだろう」
「そうですよ、ねぇ・・・?」
釈然としない。物足りない、とは言わないが唐突に変わった態度に恐ろしく寒気がするのもまた事実だ。というか、こう、優しくされると心臓が不整脈を起こす。否、起こしている。全力疾走した後のように。
その後、文句一つ言わずコンビニに寄ってくれた挙げ句、家の近くまで送ってくれた梧桐章吾。夢でも視てるんじゃないのかと疑った深夏のケータイには一通のメールが届いていた。
差出人は、家研部の先輩――檜垣玲璃。
『テニス部はインターハイ出場が決まったらしいから、今日の梧桐は機嫌良いかもよ』
だそうだ。何だ、期待して損した。